899 名無しさん@ビンキー [sage] Date:2008/07/12(土) 21:51:24 O
ID: Be:
・幼ティエにハァハァしてたロリショタコンが、過去と二期初めを捏…妄想してみたSS
・性別はどっちでもいいと思う
・けど、俺の嫁的発言ってBLだとアウトなのかな?いや、そんなことはないよ、ね
・ショタルヤ、アレルヤ、二期ルヤ
・ティエリア人外フラグ。成長しない系
・タイトルにどういれていいか分からなかったから、無理言い過ぎ☆な方はスクロールスクロール
900 過去・二期妄想アレティエSS [sage] Date:2008/07/12(土) 21:52:40 O ID: Be:
「う…どうしよう…」
一生懸命背伸びをして、ボタンを何度も押す。しかし、部屋の所有者はなかなか出てこなかった。
アレルヤは小さな体と頭で考えた。この人に限って居留守は無いだろう。しかし、ここまで鳴らしても出て来ない、おそらくどこかに出かけているか何かだ。
ふぅ、とため息をつき、持ってきた枕を両腕でぎゅっと抱き締めたその時、通路の角から探していた人物が目に入った。
「ティエリア!」
「…何だ?何か用か?」
ティエリアは肩にタオルをかけ、きれいな菫色の髪は湿って普段より紫が濃くなっている。トレーニングのあとにシャワーを浴びていたらしい。
扉に近付きパスワードを細く白い指で入力するティエリアをじっと見上げると、それに気付いたティエリアは軽く顔をしかめ、もう一度何だと尋ねた。
「あ、あのっ…、一緒に寝てくれない…かな…怖い夢見ちゃって…」
「…もう23時だ。子供は寝る時間をとうに過ぎている」
「ご、ごめんなさい…っ」
しゅんとしたアレルヤを横目にティエリアは扉を開けて中に入った。
どうしてよいか分からずその場で棒立ちになっていたが、ティエリアは何もいわずに扉を開けていてくれた。
入れという意味だよね?
アレルヤは嬉しそうに、枕を抱えて部屋の奥に入ってしまったティエリアを追い掛けた。
*
二人でひとつのベッドに丸くなる。一枚の毛布からはティエリアの心地いい匂いがする。
ティエリアは眠りについてしまったか分からないが、すでに目蓋を閉じていた。
「…ティエリア、」
小さな声で呼んでみると、ティエリアはそっと目を開けた。
まだ寝てはいなかったみたいだが、その目はとろんとして眠そうだった。
「眠れないのか?」
起こしてしまったという罪悪感があったが、アレルヤは素直にこくりと頷く。
そんなアレルヤを見てティエリアはふと口角をあげた。
(あ、きれい…)
そう思った時にはアレルヤの体にはティエリアの腕が回されていた。距離が無いに等しくなったティエリアから漂う石けんの匂いが鼻腔をくすぐる。
アレルヤが何が起こったのか把握できないままだったが、ティエリアは静かに口を開いた。
「…羊が一匹、羊が二匹」
「え…?」
「眠れるまじないだ」
そう言うと、羊が三匹、と羊を数える作業を再開した。ティエリアの心地よい声にアレルヤは次第に目を閉じていった。
ティエリアが羊を百匹、とまで数え一息ついたとき、アレルヤは閉じていた重い目蓋を持ち上げて、呟くように言った。
「…僕ね、大人になったらティエリアをお嫁さんにしてあげる」
「……愚かな事を。誰に聞いたんだ。早く寝ろ」
「だって、僕、好きなんだもん…いつかぜったい…」
羊が百一匹。二人の睡魔はここまでが限界、夢の世界へと導いた。
誰かが自分を呼ぶ声がする。
そっと目を開けてみると、目の前には小さな花が咲いていた。腹筋と右腕を使い、ゆっくり体を起こす。
自分は身に何もまとわず、花畑の真ん中に佇んでいた。
さっき、呼んだのは誰だ?その声は聞いたことの無い、だがどこか懐かしいようなやさしい声。
ティエリアはぐるりと辺りを見回すと、すぐに視線はその人物を捉えた。
「…君は、だれだ?」
「忘れちゃったの?」
その人物はくすくす笑う。
深緑の髪に浅黒い肌。白のシャツにすらっとした黒いパンツを身につけたその男はティエリアの傍まで近づきしゃがみ、ティエリアの細い肩に手をかけそのままゆっくり押し倒した。
「な、んだ?」
初めての出来事に体が緊張でこわばり、声も擦れる。怯えた瞳で見上げると、金銀の綺麗なオッドアイがすぐ目の前で揺れていた。
男はやわらかく微笑むと、ティエリアの乾いた唇にやさしくキスを落とし、小さくその唇を舐めた。
「…またね、ティエリア」
男は悲しそうに言うと、ティエリアを解放し立ち上がった。
「えっ、あっ待て!」
君は誰なんだ。君は何処に行くんだ。君は何故こんなことをしたんだ。
そして、何故哀しそうな顔をするんだ?
そう思った瞬間にも男の背中はどんどん遠く小さくなっていく。追い掛けよう、と立ち上がったが、仮に他に誰も居ない花畑であったとしても裸で全力疾走するのは憚られた。
そうして躊躇しているうちに男はもう消えていた。
呆然と立っていたその時、背後から声がかかった。
「…ティエリア」
さっきと似たよう声。だが、足がすくみ逃げる事も振り返る事もできない。
別に乱暴された訳でもないが、何かしらあの男に恐怖感を抱いているのかもしれない。足音が聞こえる、捕らえられるのも時間の問題だ。ティエリアはこわくなりぎゅっと目を瞑ったその時、もう一度強く名を呼ばれて体を揺すられ、思わず大きく目を見開いた。
「ティエリア!…どうしたの、うなされてたよ。大丈夫?」
自分を心配そうに覗き込んでいたのは右目を前髪で隠した青年だった。
そうだ、今は地上のアレルヤの仮住居で次のミッションまでの待機中だった。窓の外に目をやると、空が真っ赤な夕焼けに染まっていた。おそらく六時前といったところだろう。
「かれこれ四時間寝てたけど…怖い夢でも見た?」
ティエリアの眠っていたソファにアレルヤも腰掛ける。
「…昔、見た夢と同じ夢を見た」
「同じ夢?」
「あぁ、同じ」
男にキスされる夢。見ず知らずの男を愛しいと思ってしまった夢。
ティエリアは慌てて口をつぐみ、視線をそらした。アレルヤにそんなことを言ったら、ひどく悲しみ傷つき、下手すれば取り返しのつかないことまでやりかねない。
しかし。ティエリアは思う。先ほどの男が自分を呼ぶ声と、今、目の前にいる男の声はひどく酷似していないか。違うような感じもするが、声のトーンの低さが若干異なるだけな気がする。
「ティエリア?…えっと…ご飯出来てるけど食べる?」
「あ、あぁ」
「じゃあ、用意してくるね」
銀色の瞳が不思議そうに瞬きした。そうだ、あの男も金銀の瞳を持っていた。が、前髪で片目を隠してはいなかったし、何より彼はどこに行ってしまったのか、ティエリアには分からなかった。
* * * * *
こつりこつりと足音が響く。暗い地下通路を歩きながら、ティエリアは昔のことを思い出していた。
あの夢はたった二度、いや二度しか見なかったが、今でも鮮明に覚えている。
最後にその夢を見てからかれこれ四年の月日が過ぎた。いろんな事があり、いろんな事が終わった。しかし、その中にあの人物は存在しなかった。
その名は、アレルヤ・ハプティズム。昔、施設から逃走し放浪していたのを保護した子供時代からずっと付きっきりだった男だ。
その男が今この牢屋に閉じ込められていると聞き、今忍び込んでいる。
先ほど奪った檻の鍵はポケットに入っている。ティエリアは右手の拳銃を握りなおし、通路を進んだ。
ティエリアはふと何かの声に気付いた。誰かいる。神経を集中させ、耳をそばだてた。
「羊が百二十一匹、羊が百二十二匹、」
ティエリアは首を傾げたが、過去の記憶が蘇り、もしかしてと息を呑んだ。
気付かれてしまった。羊を数える声はしなくなったが、相手は檻の中である。自分には何も出来ないだろう。
「…そこにいるのは誰?」
ティエリアは背中に壁を付けていたので、檻の中にいる人物は見えない。だが、その声は確かに。
足が震える。手が震える。胸が、胸が痛いくらいに鼓動が早くなる。あまりの緊張にティエリアは右手に握っていた拳銃を落としてしまい、慌てて拾う。
通路の所々に設置されているランタンにティエリアの菫色の髪がうつる。
「…リジェネかい?」
リジェネ?誰のことだろう。ティエリアは空いた左手で己の胸をつかみ、どくどくと脈打つ心臓を押さえていた。
「昔ね、教えてもらったんだ。眠れないときに数えたらいいって。その子はもう僕の事なんか忘れてると思うけどね」
忘れてない。忘れるはずなんてない!
ティエリアは心の中で叫ぶ。大声で叫びたかったが、声が出ない。
「完璧主義で何回も何回も怒られた。一度はバズーカで殺されそうになったくらい」
でも、と男は続けた。
「僕は大好きだった、いや、今も好きなんだ。過去にも未来にも『愛してる』って伝えれるのはあの子だけだ」
結局、勇気が無くて言えなかったけど。それを聞いたティエリアの頬には生温い雫が伝う。嗚咽が漏らしてしまわないように必死で堪えた。
「リジェネ、君にだけ特別教えてあげる。その子の名前は、」
「…ティエリア・アーデ!!」
気が付くと大声で叫び、そして檻の前に進み出て泣き崩れていた。ぽたぽたと紅い瞳からこぼれた涙が地面に落ちる。
「…え?…ティ、エリア…!?」
そんな、馬鹿げた話があるわけがない。驚きの余り、口をぽかんと開けたままのアレルヤは、檻の前でしゃがみこむティエリアを見つめていた。
「ど、どうして、ここ、に?」
酷く動揺したアレルヤが勢いよく檻をつかむとガタン!と大きな音がし、ティエリアはびくりと肩を震わせた。
ティエリアの右手には、強く拳銃が握られている。
「…殺しに、来たの?」
アレルヤは恐る恐る尋ねる。組織を知っている自分は目障りな存在なのかもしれない。そしてティエリアはそんな任務ならさっさと済ませてしまうような人間だ。
抵抗しても檻では何もならないことを悟ったアレルヤは、唇を噛み締めて殺される覚悟を決めた。が、ティエリアは睨んだかと思うとまたその瞳から涙を溢れさせて叫んだ。
「助けに来たに決まっているだろう、アレルヤ・ハプティズム!!」
たすけ…?まさか…。
そのまさかだった。ティエリアがポケットから取り出した鍵を穴に差し込むと、ぎぃと金属が錆びた音と共に扉が開いた。
それと同時にアレルヤの胸に飛び込みこれでもかというくらい泣きじゃくるティエリアを見て、アレルヤは金銀の両瞳から暖かい涙を溢れさせ、声を上げて泣いた。
ティエリアと離れ離れになって会えなくなってから、初めて泣いた夜だった。
*
それから半日後あの暗く湿った牢屋を抜け出した二人は、以前アレルヤの仮住居であったアパートに到着した。
アレルヤがやむを得ず帰ってこれなくなった部屋をティエリアが代わりに借りて住んでいたのだ。
「…ただいま…!」
懐かしい部屋の匂いが扉を開けると、すっと押し寄せる。
ティエリアは明日の夜にソレスタルビーイングに帰るといっていたが、自分はここに残るのだろう。仮にも捕虜になった身分だ、組織にとってけして安全な人物ではない。そう思っていたが、どうやら違うらしい。途中、ティエリアに新しいガンダムに乗ることを告げられた。
また人を殺すのかと思うと胸が苦しいが、愛しいティエリアと一緒にいられるのなら、と淡い期待を抱いてしまう自分を嫌悪した。
既に空は白く、朝が訪れようとしている。
アレルヤは引かれるように、ベランダへ出て空を見つめると、その隣にティエリアが並んだ。
「…もう朝…か」
「あぁ」
「ティエリア、綺麗になったね」
「…残念ながら成長はしていない」
「雰囲気がだよ」
誰か好きな人でも出来た?とアレルヤが笑う。
アレルヤは長かった前髪を切り、金銀のオッドアイを外気に曝していた。四年前に比べ、顔立ちも大人っぽくなり、声も少し低くなっている。まるで、
「…あの夢の男……」
「夢?」
「…いや、なんでもない」
ティエリアは段々と明るくなる空を見上げ、大きく息を吸って吐いた。そして、昔と変わらずたくましい、いや、よりたくましくなったアレルヤの厚い胸に菫色の頭を寄せてみる。
アレルヤが細い体をぎゅっと抱き締めると、応えるようにティエリアも背中に腕を回した。
「僕が小さい頃、ティエリアをお嫁さんにしたいって言ったの…覚えてる?」
ティエリアは何も言わずこくりと頷いた。
「じゃあ…ティエリア、僕のお嫁さんに、なってくれますか」
「くれますか、じゃなくて下さい、じゃないのか?」
ティエリアがいたずらっぽく笑うとアレルヤもやわらかく微笑んだ。
それは夢に出てきた男と全く同じの笑顔で一瞬どきりとする。
「…それに、」
「それに?」
「既にここに住むと決めている。…嫁に貰ってもらわないと困るんだが」
その言葉を聞いてうれしくなったアレルヤは抱き締めている腕により一層力をこめてしまい、腕の中の恋人にきつくたしなめられる。
そのまましばらく二人は見つめあったあと、触れるだけのキスから、互いを求めるような深いキスをした。
「…そろそろ寝ようか」
「もう眠くない」
「じゃあ、僕が羊を数えてあげる…!」
そうしているうちに空に四年前、いやそれ以前から変わらず光を注ぎ続けている太陽が昇りはじめていた。
おわり