文献・文章

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#contents() ***国家史誌    メディ・ムンドゥスで、レイトンに見せてもらったもの1     我らが偉大なる祖国インペリウムは、     最高指導者たるインペラートルを中核として成り立つ、世界に冠たる大帝国である。     帝国の国土は直轄領と自治管区に分類され、     直轄領はインペラートル御自らが、自治管区は各管区長官が統治を代行し…   解説    第一帝國期のプロパガンダ文章。 ***300年戦争の終わり―RIHB主導による文化的再統合計画―    メディ・ムンドゥスで、レイトンに見せてもらったもの2     人類の歴史は、戦争の歴史である。     我々が忘却されし母なる星の地表上に出現してより、     争いは常にヒトの最も親愛なる友人の一人だった。     そして今、かつてとは比較にならぬほど広大な領域を統べる事となった我々は、     その歴史上の愚と何ら変わる事なき憎悪の渦に囚われている。     何故かくもヒトは相争うのか。     その答えは既に明白である。     この現状、行き過ぎた多様性こそが、諸悪の根源なのだ   解説    この本が書かれた当時は、超光速移動が当たり前に出来るような時代で、    宇宙には大量の共同体が乱立していて、300年以上も混戦状態が続いてたらしい。    そんな現状に怒りを覚えた作者の人は、大量の共同体が生まれる原因となったもの――    行き過ぎた文化的多様性こそが諸悪の根源だと考えて、あらゆる文化を統合した究極の人類文化を作ろう…と、そう思い立ったらしい    その結果生まれたのが、新宇宙秩序構築運動や文化統合主義という考え方。    行く行くは文化統合主義を掲げる共同体、(RIHB――the Republic of Integrated Human Being)    そんな感じの国家を立ち上げて、終わり無き戦乱に終止符を打とう…。    これはその運動を拡大させる事を目的に書かれたものらしい。   キーワード    RIHB(the Republic of Integrated Human Being)    International Aliance    アルマース(企業名)    アルティック・ネクスト(企業名)    ベッケンシュタイン=ホーキング機関    門機関    グロースリーゼ ***謎の古い民話    ヒュドルニオンの高級ホテルの一室で見つけた本   解説というかあらすじ     主人公がある昔話に触れるところから始まる物語。     それはこの世界に細々と受け継がれている旧いお話で、現代でいうなら童話のような、誰もが物語としか捉えない類のもの。     歴史学者だった主人公は、それを単なる物語とは捉えず、フィクションとして描かれる世界の中に、ある種の真実を見出した。     主人公は、物語を元に仮説を組み立て、仕事の合間に調べ物を始めた。最初は単なる暇潰し程度にしか考えていなかったが…     調べれば調べるほどに、物語はどんどん現実味を持ち始め、やがて主人公は考えを改める。     『私の住んでいる世界は、更に大きな世界のごく一部でしかなかったのだ。      世界には、何も無いとされる海の彼方には、新たな世界が拡がっている』     『かつて、遥かなる過去――この大地がローランドではなくロディニアと呼ばれていた頃。      かつて、真実なる物語の時代――』     歴史学者として、稀代の大発見の可能性に歓喜する主人公。しかし、その喜びはそう長くは続かなかった。     何時の頃からか、主人公は気付いたのだ。自分が何者かに監視されていることを…。     それは、最初の頃は単なる気のせい程度に。けれど段々と大胆に、主人公の日常を侵食し始める。     やがて精神の均衡を失った主人公は、脅威と恐怖に満ちたこの大陸を捨て、海の彼方を目指すことを決意。    『私は知っている、インペリウムの伝える歴史が虚構であることを。     私は知っている、この国は全世界を統治などしていないことを。     私は知っている、海の彼方には聖なる土地が存在する事を。     私は知っている、私は知っている、私は知っている、だから…』    『だから私は、この穢れと欺瞞に満ちた世界を捨て、目指すのだ。     パノティアを、アル・フィライカを、そして――。     そして到るのだ――全ての真実を、この手に…』     主人公はそう言って、粗末な漁船で大海へ乗り出す。     その後の主人公の消息は、誰にもわからない。聖なる土地へ辿り着いたのかもしれないし、餓えて死んでしまったのかもしれない。     ――そして、それから数年の後…。コールドヒルという名の長閑な港街、その海岸で散歩をしていた青年は…     波で打ち上げられた瓶を発見。     瓶の中には、何枚もの手紙が詰められていた。     素晴らしき愚か者が体験した、世にも奇妙な冒険の日々。そして、その顛末までを記した、長い長い物語が…     著者:イライアス民話保存協会 ***第27次遺産回収計画によって収容された書物に関する諸記録    ヒュドルニオンでクタアト検索中に引っかかったデータ アンゼルム=ヴェルダーホーフ(下記の水神クタアトに関する逸話参照)が公開していた情報。 彼の家に昔から伝わる暗号とかで、解読してくれた人には報酬を出す予定だった。     “回収責任者、アンブロシュ・ベルダーハフ”     “回収計画概要”     “到達目標座標:N27004:E01291:+12:29PC”     “回収対象:大型輸送艦。グロースリーゼクラスと思われる”     “作業は計画通りに推移。対象船舶はグロースリーゼではなく、旧時代の輸送艦の一種と推測される。船体下部に“Mayflower-5”との塗装あり”     “艦内の捜索を進めたところ、大量の文化的遺産が発見される。      保存状況は比較的良好であり、解読によって興味深い事実が判明した”     “この輸送艦は、9割以上の確率で地球製だと推測される”     “根拠は大きく3つ。船体の構成素材、艦内で用いられていた言語、複数の文化的遺産である”     “なお、回収された品の多くは保存庫へと送られたが、一部の書籍は例外扱いとし、厳重な封印を行った”     “以下に、封印対象となった遺産を記す”     “Cthaat Aquadingen”     “Ilghyt Ghurafiarshey”     “Tabula Smaragdina”     “くれぐれも、厳重な管理を望むものである”   キーワード     第27次遺産回収計画     保存庫     封印     アンブロシュ・ベルダーハフ     禁書     魔術書     グロースリーゼ     Mayflower-5     地球     英語     Cthaat Aquadingen(水神クタアトの事)     Ilghyt Ghurafiarshey(魔術書)     Tabula Smaragdina(魔術書) ***シャントルイユ国立特殊生物研究所における暴走事故に関する暫定的レポート    ヒュドルニオン国防技術研究所の端末データ     『警告:この文書はクラス4の機密指定を受けています。        権限の無い者による閲覧や、外部への情報漏えいは重罪であり、        死刑を含めた厳罰が科せられます』     『注意:この報告書は暫定的なものであり、政府としての公式見解を示す物ではありません。        一連の事故に関する調査は現在も継続中です』     事故概要:     統暦149年10月22日、シャントルイユ国立特殊生物研究所にて、     新式生物兵器(暗号名ヘイトレッド)に関する何らかの実験が行われた。     実験の詳細は情報錯綜につき不明確だが、歩兵との模擬戦闘試験だったものと思われる。     同日正午前後、シュヴィヤール自治管区政府に、シャントルイユ研究所より緊急連絡が入った。     連絡は同時に首都及び近隣の軍施設にも向けられており、相当に緊迫した状況だったらしい事が窺える。     連絡内容は、要約すれば“実験中の新兵器が暴走した”というもの。     数分後には最寄の空軍基地より対応部隊が派遣される。     到着した対応部隊は、同研究所が完全な汚染下にあることを確認。     規定の生物災害対応手順に従い、Type3凝集爆弾による攻撃を敢行した。     その後の観測により、研究所を中心とする半径5ウェストンの範囲が完全に消滅したことが確認される。     しかし、この攻撃は不十分だったものと見られ――     翌23日には、近隣の複数の都市が、未知の生物による攻撃を受けた。     攻撃の規模自体は、駐留部隊によって十分対応可能な程度であったものの、     拡散のスピードがあまりに急激であり、放置すれば大きな脅威となることは明白であった。     中央政府はこの状況に際して、シュヴィヤール自治管区の閉鎖を命令。     徹底的な駆除作戦が開始されるも、ヘイトレッドの高い戦闘・繁殖・学習能力によって軍に大きな被害が出る。     この状況を打破する為、各種の手段が講じられたが――     通常の攻撃手段では汚染の拡大に対応できず、凝集爆弾による攻撃をもってしても殲滅は不可能だった。     同年11月03日、中央政府は対抗生物兵器の投入を決定し、     翌04日にはシュヴィヤール自治管区全体にアセンシオの撒布が行われる。     アセンシオとは、対象の繁殖力や思考能力等へ打撃を与える極小生物であり、     投入に際しては対ヘイトレッド用の最適化処置が行われた。     この作戦は大きな成果を挙げ、同年11月中には脅威レベルは大きく低下するが、     完全な抹消には到らず――野生化したヘイトレッドなどが、大陸各地へと拡散していった。     だが、軍にそれらを完全に掃討するだけの体力は無く、     一連の作戦は同年12月1日を以って打ち切られる。     同時に、アセンシオによる第2次攻撃計画も、危険度が高すぎるとして中止された。     その後の経過は、各種報道などで聞かれる通りである。     暴走当初から比べれば格段に対処しやすくはなっているものの、     非武装の一般市民からすれば、十分な脅威と言えるだろう。     可能な限り早急な対応が望まれる――』 ***Type55オートマタの製造計画概要及び各種詳細データ       ヒュドルニオン国防技術研究所の端末データ    「オートマタ。     正式名称、非生物型自律行動式純粋魔力知性体。     統暦131年、流動性擬似生体開発プロジェクトから分岐し、     独自の研究計画として、セクンダム・アウローラ国立国防技術研究所にて始動する」    「この計画の究極的な目標は、人類と同等の知性を、非生物に持たせること――     ひいては、人類自体を肉の頚木から解き放ち、より高度な存在へと昇華させることにあった」    「計画には、中央政府や各自治政府から、多額の費用と技術援助が寄せられ、     プロジェクトは瞬く間にその重要度を増し、巨大化していった」    「その背景には、当時の世界情勢が大きく関係しているが、この場では割愛する」    「統暦140年6月、最初の知性化実験が成功し、計画は大幅な進展を遂げた。     被験者とイニティウムを接触させ、高出力魔術を行使し続ける――     即ち、旧来型の魔力凝集爆弾と同じ工程を行うことで、イニティウムに意識が宿る――というのである」    「意思の疎通には、生物と非生物という関係上大きな手間を要するが、     それは間違いなく知的存在であった」    「統暦141年1月、研究が再び大きく進展する。     前述の知性化されたイニティウムを、流動性擬似生体に浸すことで、     擬似生体とイニティウムが高度に結合し、任意に形状を操作出来るという事が判明したのだ。     これによって、意思疎通は大幅に容易なものとなり、     現代型のオートマタへの道が開けることとなる」    「また、この擬似生体への移植という行為は、     知性体の精神崩壊を防ぐ意味でも、極めて有用だった。     それまでの調整措置のみでは、1年以内に消失する例が大半だったのである。     そして、統暦145年7月11日。     オートマタと名付けられた純粋魔力知性体の最初のモデル、Type45の生産が開始される。     核となるイニティウムには、選抜された兵士が身を捧げた。     彼らの知性は奇跡の核へと宿り、永久に国へと忠義を尽くし続けるであろう… ***メディ・ムンドゥスの宗教観    ミシェーラが疑問に思った、宗教に関する話をヤラナイオに聞いた時の話    「実は、この世界に来てからずっと疑問だった事があるんです。     それは――宗教についての問題です」    「よくあるファンタジーものでは必ず教会が出てくるし、     現代でも宗教は大きな影響を持ってますけど――この世界では、     教会もシャーマンも存在しなければ、神が持ち出される事もありません」    「数少ない例外と言えば、例の媚薬の説明書に出てきた謎の精霊や、     ヴィーナス…つまり美の女神位ですけね…」    「そうです、ヒュドルニオンでだけです。     そのヒュドルニオンにしても、検索している時に宗教関係のワードが引っ掛かることは稀でした。     あったとしても、冗談のような文脈や、ヴィーナスのような代名詞としてのみです」    「これがどうにも奇妙で、道中で何度か質問をしてみました。     神や信仰、創世譚、民間伝承などについて――」    「大体は空振りに終わったんですが…幾つか奇妙な符号が見つかりました。     それも決まって創世神話関係で」    「この創世神話というのは、第一帝国以前から伝わるもので、     驚くべきことに世界各地に似たようなものが残っているそうです。     ただ、今となっては、御伽噺の題材として伝えられている程度らしいんですが…」    「たまには私も一人で頑張りますよ…!」    「それはともかく…! これらの神話には、とある共通のキーワードがあります。     1つ目、創世神が空から降りてくること     2つ目、神の故郷は星辰の彼方、つまり宇宙であること     3つ目、銀色の物質が登場すること     4つ目、神々は最後には必ず姿を隠し、その後に混沌の時代が訪れること」    「語り継がれなくなった主な理由は、4番目のようです」    「神は人を作っておきながら、それを見捨てて消えてしまう。     故に、世には混沌が満ち、人々は大いなる苦難へ直面した…」    「銀がよく出てくるんですよね…。     銀色の棒、銀色の鉱物、銀色の物質…何故銀なのかはわかりませんけど…。     もしかして本当にいあいあなアレなんでしょうか…発狂とか嫌ですよ…!」    「あ、それからもう一つ――大戦争についての話も見逃せないところです。     神が降り、世界が生まれ、地には人が満ち、世は楽園。     そこに突如として悪魔が現れ、神と人類の連合軍と大戦争を繰り広げたんだそうです。     結果として悪魔は滅ぼされたものの、楽園は失われ、神と人は降誕の地を捨てて長い旅に出たとか…」    「なんというか、エクソダスって感じですね…」    「単なる失われた神話とも、史実を基に作ったとも考えられますけど、     一つ確実なのは――核心に到るにはあまりに情報が足りないってことですね」    「何せ数千年以上も前なので…一部の共通点以外は、皆好き勝手に言ってるんです。     人類は神の子孫だと言ってみたり、神は一度去ったけどやっぱり戻ってきたと言ってみたり、     神と悪魔の混血がヘイトレッドだと言ってみたり、神は死んだと言ってみたり」    「そんなところで、昔話は終わりですよ…!」 ***クスクスチャンネル・ジョーク集   クスクスタワーのテレビで流れてた番組    モニター「なぁなぁ、さっきからずっと呼びかけてるんだが、          何回やっても返事が返ってこないんだよ」    モニター「ひょっとして、あいつら全員ハーテリィドに…」    モニター「何を言ってるんだ、返答が無いのは当然だろ?」    モニター「俺たちの使ってる無線機は、          あいつらより3ヶ月も前に作られたんだ」    モニター「これだけ時間が空いてれば、通じないのも当然さ」    モニター「それもそうだな!」    モニター「最近、配給が滞っている。          特に砂糖などの嗜好品は、いつまで経っても“生産が遅れている”ままだ」    モニター「堪りかねた民衆は、砂糖工場で働く男の家に押しかけた」    モニター「おい、お前ら!          ひょっとして、自分達で全部舐めてるんじゃないだろうな?」    モニター「まさか」    モニター「男は肩を竦めて頭を振った」    モニター「作っても作っても、完成直前で軍に持ってかれるんだ。          だからいつまで経っても生産が終わらないのさ」 ***イシュメル新報、6月1日号外    メディ・ムンドゥスの王都イシュメルの新聞記事     帝都大火災の裏側に潜む、謎の勢力による陰謀の気配。     イシュメル新報、6月1日号外     突如として牙を剥いた大火により、帝都中が恐慌状態に包まれたかの夜。     騒乱の影にまぎれるようにして囁かれた、得体の知れない噂をご存知だろうか?     曰く、屋根の上を恐るべき速度で移動する人影を見た。     曰く、その人影は大量の泡でもって火災を迅速に消滅させた。     曰く、それは一見して普通の女であった     実に奇怪極まりない噂話であり、賢明なる常識人でならば、     酔っ払った冒険者の戯言として軽く笑い飛ばすべき内容だ     しかし、一方ではこんな噂もある     曰く、あの業火の中を自在に動き回る怪しげな人影を見た。     曰く、その人影はあちこちに火の粉をばら撒き、瞬く間に楽園を焔の底に沈めた。     曰く、それは正体不明の黒い装束を身に纏っていた     そして、本誌記者は綿密かつ迅速な取材の末、極めつけの噂を掘り当てる事に成功した     曰く――     その女と黒衣の者は、巨大な炎の竜巻と奇妙に煌く泡を衝突させ…そして、諸共に消えてしまった…     そう、消えてしまったのである。     この壮大なる対決の幕が降りた時には、両者共に跡形も無く消え失せていたのだ     一連の騒動と重ね合わせてみれば、これが尋常ならざる者達による行いである事は明らかなのだ     よって、ここに本誌は宣言する     この帝都には、一般には知られていない闇の勢力が存在し、     それらは互いに敵対する関係にあるのだ――と     そう考えてみれば、今回の火災の原因は単純明快である。     我々は要するに、その2つの勢力の争いに巻き込まれたのだ     残念ながら、今回掴んだ情報は以上である。     だが、我々は如何なる妨害にも屈さず、常に真実の追究者として活動してきた。     その方針は今後も変えるつもりは無い     だからこそ、これは…そう、一種の宣戦布告なのだ。     この街で暗躍する名も知れぬ者達への、“必ずやお前たちの陰謀を白日の下に晒してやる”――という     なお、この件に関する情報の提供は、今後とも今まで通り歓迎する。     内容によっては相応の謝礼も考えているので、     思い当たる点がある読者の方は気軽に編集部を訪ねて頂きたい     ちなみに、“本人達”からの意思表示も歓迎である… ***水神クアタトに関する逸話    ヒュドルニオンの行政庁舎でミシェーラが聞いた話聞いた話     わかりました、じゃあ細かくお話ししますね     まず、この本の現在の在り処ですけど…。     この行政庁舎の中にある図書館の、非公開書庫内にしまわれているそうです     というのも、以前はある人物の所有だったそうなんですが、     どうやら家族も親しい知り合いも居ない人だったらしくて、全ての遺産を市に寄贈してしまったとかで…。     自動的に図書館行きになったみたいです     その人の名前は、アンゼルム・ヴェルダーホーフ。     セクンダム・アウローラ市の建設計画を主導した人物にして、第一帝国の初期から存在する名家の出だったそうです     ただ、名家といっても、一族としてはすっかり没落してしまっていたらしくて…。     彼の死と同時に断絶してしまったとか     ともかくも、アンゼルムさんは亡くなり、ヴェルダーホーフ家は断絶し、     その資産の全ては市の物となりました。     そしてその中には、水神クタアトも含まれていたんです     やがて、他の書籍と共に図書館に送られたクタアトですけど…。     一般にも貸し出されるようになった頃から、奇妙な事態が多発し始めます     たとえば、興味半分で見た子供が卒倒し、その後数日間悪夢にうなされ続けたり…。     図書館に立ち入った人々が妙な威圧感の存在を訴え始めたり…     でも、ここまでは大事という訳でもないので、     図書館側も単なる噂程度にしか捉えていなかったそうなんですが…     ある日遂に事件が起こります     市街地のどこかで異臭騒ぎのようなものが起きて、     警察が家の中に踏み込んだところ…     水浸しの部屋の中で、男性が1人死んでいたそうなんです。     胸には例の本を抱いて、恐ろしい形相で目を剥いて…     結局、この一件は自殺として処理されたそうなんですが、     これはさすがにおかしいという話になって、遂には未公開書庫に押し込められて…     以降、今まで放置状態なんだそうです ***誰かの日記   アーフィル・アル=マクバルのボロ船で見つけた、誰かの日記    (“5月22日”)    (“遂にこの日が来た。      政府が全ての航路の閉鎖を命じたのだ。      覚悟はしていたが、いざ目の当たりにするとショックが隠せない”    (“客船としての運命を捨て、言われるままに輸送艦としての任を果たしていたのに。      これからは、海に出る事さえ叶わないのか”)    (……。     なんだか、凄く愚痴っぽい日記ですね…)    (あ、それから…。     手記の内容から、この世界が滅んだ原因が分かりました)    (ハーティリドです…。     これはもう、確定ですね…)    (この世界とナジェージヴァストークは、明らかに繋がりがあります) ***オリンポス技術大学の緊急会見    ルーナ・サプリメイションで発見された、銀色の物質についての会見    「では、今回の事態に関して、より詳細な報告を申し上げます」    「本日、5月25日の標準時15時03分。当大学の高エネルギー物理学研究棟の3階で小規模な爆発が発生しました」    「当初、爆発が生じた理由は不明でしたが、その後の警察による聞き取り調査の結果、とある事実が判明致しました」    「爆発発生当時、大本となった研究室を利用中だった、当大学物理学部教授のフェリックス・サムフォードは…」    「構内のコンビニエンスストアで購入した弁当を、研究室備え付けの電子レンジで加熱しようとしたところ…」    「誤って、実験試料を電子レンジ内に置き忘れ…」    「そのまま加熱するに到ったところ、電子レンジが突如として炸裂し…」    「現在報道されているような、爆発事故へと発展した訳であります」    「…しかし、この緊急記者会見の意図は謝罪ではなく、間違いなく人類史に刻まれるであろうこの発見を、皆様と共に分かち合う為のものであります」    「端的に申し上げれば、先程の爆発事故には再現性があるのです」    「より詳しく説明致します」    「先刻の爆発事故より後、我々は幾つかの実験を緊急に実施しました。     その内容は、置き忘れられた試料――“ガリレオより発掘された銀色の物質”へ、“ある程度以上の出力のマイクロ波を照射する”というものです」    「その結果、一つの結論が導き出されました」    「“銀色物質”には、高出力のマイクロ波の照射を受けた場合、通常考えられない量の発熱を来たす性質があるのです」    「マイクロは照射に要したエネルギーより、遥かに莫大な量の熱を――です」    「この結果は熱力学の第一法則に反するものです。つまり――この物質は、エネルギー保存の法則を凌駕し、“何も無い場所からエネルギーを生み出している”のです!」    「これは永久機関の発見に他なりません!」 &link_back() ---- メモ  ミシェーラが入手・閲覧した文章のうち、未分類のもの  テキトーに放り込んであります  
#contents() ***国家史誌    メディ・ムンドゥスで、レイトンに見せてもらったもの1     我らが偉大なる祖国インペリウムは、     最高指導者たるインペラートルを中核として成り立つ、世界に冠たる大帝国である。     帝国の国土は直轄領と自治管区に分類され、     直轄領はインペラートル御自らが、自治管区は各管区長官が統治を代行し…   解説    第一帝國期のプロパガンダ文章。 ---- ***300年戦争の終わり―RIHB主導による文化的再統合計画―    メディ・ムンドゥスで、レイトンに見せてもらったもの2     人類の歴史は、戦争の歴史である。     我々が忘却されし母なる星の地表上に出現してより、     争いは常にヒトの最も親愛なる友人の一人だった。     そして今、かつてとは比較にならぬほど広大な領域を統べる事となった我々は、     その歴史上の愚と何ら変わる事なき憎悪の渦に囚われている。     何故かくもヒトは相争うのか。     その答えは既に明白である。     この現状、行き過ぎた多様性こそが、諸悪の根源なのだ   解説    この本が書かれた当時は、超光速移動が当たり前に出来るような時代で、    宇宙には大量の共同体が乱立していて、300年以上も混戦状態が続いてたらしい。    そんな現状に怒りを覚えた作者の人は、大量の共同体が生まれる原因となったもの――    行き過ぎた文化的多様性こそが諸悪の根源だと考えて、あらゆる文化を統合した究極の人類文化を作ろう…と、そう思い立ったらしい    その結果生まれたのが、新宇宙秩序構築運動や文化統合主義という考え方。    行く行くは文化統合主義を掲げる共同体、(RIHB――the Republic of Integrated Human Being)    そんな感じの国家を立ち上げて、終わり無き戦乱に終止符を打とう…。    これはその運動を拡大させる事を目的に書かれたものらしい。   キーワード    RIHB(the Republic of Integrated Human Being)    International Aliance    アルマース(企業名)    アルティック・ネクスト(企業名)    ベッケンシュタイン=ホーキング機関    門機関    グロースリーゼ ---- ***謎の古い民話    ヒュドルニオンの高級ホテルの一室で見つけた本   解説というかあらすじ     主人公がある昔話に触れるところから始まる物語。     それはこの世界に細々と受け継がれている旧いお話で、現代でいうなら童話のような、誰もが物語としか捉えない類のもの。     歴史学者だった主人公は、それを単なる物語とは捉えず、フィクションとして描かれる世界の中に、ある種の真実を見出した。     主人公は、物語を元に仮説を組み立て、仕事の合間に調べ物を始めた。最初は単なる暇潰し程度にしか考えていなかったが…     調べれば調べるほどに、物語はどんどん現実味を持ち始め、やがて主人公は考えを改める。     『私の住んでいる世界は、更に大きな世界のごく一部でしかなかったのだ。      世界には、何も無いとされる海の彼方には、新たな世界が拡がっている』     『かつて、遥かなる過去――この大地がローランドではなくロディニアと呼ばれていた頃。      かつて、真実なる物語の時代――』     歴史学者として、稀代の大発見の可能性に歓喜する主人公。しかし、その喜びはそう長くは続かなかった。     何時の頃からか、主人公は気付いたのだ。自分が何者かに監視されていることを…。     それは、最初の頃は単なる気のせい程度に。けれど段々と大胆に、主人公の日常を侵食し始める。     やがて精神の均衡を失った主人公は、脅威と恐怖に満ちたこの大陸を捨て、海の彼方を目指すことを決意。    『私は知っている、インペリウムの伝える歴史が虚構であることを。     私は知っている、この国は全世界を統治などしていないことを。     私は知っている、海の彼方には聖なる土地が存在する事を。     私は知っている、私は知っている、私は知っている、だから…』    『だから私は、この穢れと欺瞞に満ちた世界を捨て、目指すのだ。     パノティアを、アル・フィライカを、そして――。     そして到るのだ――全ての真実を、この手に…』     主人公はそう言って、粗末な漁船で大海へ乗り出す。     その後の主人公の消息は、誰にもわからない。聖なる土地へ辿り着いたのかもしれないし、餓えて死んでしまったのかもしれない。     ――そして、それから数年の後…。コールドヒルという名の長閑な港街、その海岸で散歩をしていた青年は…     波で打ち上げられた瓶を発見。     瓶の中には、何枚もの手紙が詰められていた。     素晴らしき愚か者が体験した、世にも奇妙な冒険の日々。そして、その顛末までを記した、長い長い物語が…     著者:イライアス民話保存協会 ---- ***第27次遺産回収計画によって収容された書物に関する諸記録    ヒュドルニオンでクタアト検索中に引っかかったデータ アンゼルム=ヴェルダーホーフ(下記の水神クタアトに関する逸話参照)が公開していた情報。 彼の家に昔から伝わる暗号とかで、解読してくれた人には報酬を出す予定だった。     “回収責任者、アンブロシュ・ベルダーハフ”     “回収計画概要”     “到達目標座標:N27004:E01291:+12:29PC”     “回収対象:大型輸送艦。グロースリーゼクラスと思われる”     “作業は計画通りに推移。対象船舶はグロースリーゼではなく、旧時代の輸送艦の一種と推測される。船体下部に“Mayflower-5”との塗装あり”     “艦内の捜索を進めたところ、大量の文化的遺産が発見される。      保存状況は比較的良好であり、解読によって興味深い事実が判明した”     “この輸送艦は、9割以上の確率で地球製だと推測される”     “根拠は大きく3つ。船体の構成素材、艦内で用いられていた言語、複数の文化的遺産である”     “なお、回収された品の多くは保存庫へと送られたが、一部の書籍は例外扱いとし、厳重な封印を行った”     “以下に、封印対象となった遺産を記す”     “Cthaat Aquadingen”     “Ilghyt Ghurafiarshey”     “Tabula Smaragdina”     “くれぐれも、厳重な管理を望むものである”   キーワード     第27次遺産回収計画     保存庫     封印     アンブロシュ・ベルダーハフ     禁書     魔術書     グロースリーゼ     Mayflower-5     地球     英語     Cthaat Aquadingen(水神クタアトの事)     Ilghyt Ghurafiarshey(魔術書)     Tabula Smaragdina(魔術書) ---- ***シャントルイユ国立特殊生物研究所における暴走事故に関する暫定的レポート    ヒュドルニオン国防技術研究所の端末データ     『警告:この文書はクラス4の機密指定を受けています。        権限の無い者による閲覧や、外部への情報漏えいは重罪であり、        死刑を含めた厳罰が科せられます』     『注意:この報告書は暫定的なものであり、政府としての公式見解を示す物ではありません。        一連の事故に関する調査は現在も継続中です』     事故概要:     統暦149年10月22日、シャントルイユ国立特殊生物研究所にて、     新式生物兵器(暗号名ヘイトレッド)に関する何らかの実験が行われた。     実験の詳細は情報錯綜につき不明確だが、歩兵との模擬戦闘試験だったものと思われる。     同日正午前後、シュヴィヤール自治管区政府に、シャントルイユ研究所より緊急連絡が入った。     連絡は同時に首都及び近隣の軍施設にも向けられており、相当に緊迫した状況だったらしい事が窺える。     連絡内容は、要約すれば“実験中の新兵器が暴走した”というもの。     数分後には最寄の空軍基地より対応部隊が派遣される。     到着した対応部隊は、同研究所が完全な汚染下にあることを確認。     規定の生物災害対応手順に従い、Type3凝集爆弾による攻撃を敢行した。     その後の観測により、研究所を中心とする半径5ウェストンの範囲が完全に消滅したことが確認される。     しかし、この攻撃は不十分だったものと見られ――     翌23日には、近隣の複数の都市が、未知の生物による攻撃を受けた。     攻撃の規模自体は、駐留部隊によって十分対応可能な程度であったものの、     拡散のスピードがあまりに急激であり、放置すれば大きな脅威となることは明白であった。     中央政府はこの状況に際して、シュヴィヤール自治管区の閉鎖を命令。     徹底的な駆除作戦が開始されるも、ヘイトレッドの高い戦闘・繁殖・学習能力によって軍に大きな被害が出る。     この状況を打破する為、各種の手段が講じられたが――     通常の攻撃手段では汚染の拡大に対応できず、凝集爆弾による攻撃をもってしても殲滅は不可能だった。     同年11月03日、中央政府は対抗生物兵器の投入を決定し、     翌04日にはシュヴィヤール自治管区全体にアセンシオの撒布が行われる。     アセンシオとは、対象の繁殖力や思考能力等へ打撃を与える極小生物であり、     投入に際しては対ヘイトレッド用の最適化処置が行われた。     この作戦は大きな成果を挙げ、同年11月中には脅威レベルは大きく低下するが、     完全な抹消には到らず――野生化したヘイトレッドなどが、大陸各地へと拡散していった。     だが、軍にそれらを完全に掃討するだけの体力は無く、     一連の作戦は同年12月1日を以って打ち切られる。     同時に、アセンシオによる第2次攻撃計画も、危険度が高すぎるとして中止された。     その後の経過は、各種報道などで聞かれる通りである。     暴走当初から比べれば格段に対処しやすくはなっているものの、     非武装の一般市民からすれば、十分な脅威と言えるだろう。     可能な限り早急な対応が望まれる――』 ---- ***Type55オートマタの製造計画概要及び各種詳細データ       ヒュドルニオン国防技術研究所の端末データ    「オートマタ。     正式名称、非生物型自律行動式純粋魔力知性体。     統暦131年、流動性擬似生体開発プロジェクトから分岐し、     独自の研究計画として、セクンダム・アウローラ国立国防技術研究所にて始動する」    「この計画の究極的な目標は、人類と同等の知性を、非生物に持たせること――     ひいては、人類自体を肉の頚木から解き放ち、より高度な存在へと昇華させることにあった」    「計画には、中央政府や各自治政府から、多額の費用と技術援助が寄せられ、     プロジェクトは瞬く間にその重要度を増し、巨大化していった」    「その背景には、当時の世界情勢が大きく関係しているが、この場では割愛する」    「統暦140年6月、最初の知性化実験が成功し、計画は大幅な進展を遂げた。     被験者とイニティウムを接触させ、高出力魔術を行使し続ける――     即ち、旧来型の魔力凝集爆弾と同じ工程を行うことで、イニティウムに意識が宿る――というのである」    「意思の疎通には、生物と非生物という関係上大きな手間を要するが、     それは間違いなく知的存在であった」    「統暦141年1月、研究が再び大きく進展する。     前述の知性化されたイニティウムを、流動性擬似生体に浸すことで、     擬似生体とイニティウムが高度に結合し、任意に形状を操作出来るという事が判明したのだ。     これによって、意思疎通は大幅に容易なものとなり、     現代型のオートマタへの道が開けることとなる」    「また、この擬似生体への移植という行為は、     知性体の精神崩壊を防ぐ意味でも、極めて有用だった。     それまでの調整措置のみでは、1年以内に消失する例が大半だったのである。     そして、統暦145年7月11日。     オートマタと名付けられた純粋魔力知性体の最初のモデル、Type45の生産が開始される。     核となるイニティウムには、選抜された兵士が身を捧げた。     彼らの知性は奇跡の核へと宿り、永久に国へと忠義を尽くし続けるであろう… ---- ***メディ・ムンドゥスの宗教観    ミシェーラが疑問に思った、宗教に関する話をヤラナイオに聞いた時の話    「実は、この世界に来てからずっと疑問だった事があるんです。     それは――宗教についての問題です」    「よくあるファンタジーものでは必ず教会が出てくるし、     現代でも宗教は大きな影響を持ってますけど――この世界では、     教会もシャーマンも存在しなければ、神が持ち出される事もありません」    「数少ない例外と言えば、例の媚薬の説明書に出てきた謎の精霊や、     ヴィーナス…つまり美の女神位ですけね…」    「そうです、ヒュドルニオンでだけです。     そのヒュドルニオンにしても、検索している時に宗教関係のワードが引っ掛かることは稀でした。     あったとしても、冗談のような文脈や、ヴィーナスのような代名詞としてのみです」    「これがどうにも奇妙で、道中で何度か質問をしてみました。     神や信仰、創世譚、民間伝承などについて――」    「大体は空振りに終わったんですが…幾つか奇妙な符号が見つかりました。     それも決まって創世神話関係で」    「この創世神話というのは、第一帝国以前から伝わるもので、     驚くべきことに世界各地に似たようなものが残っているそうです。     ただ、今となっては、御伽噺の題材として伝えられている程度らしいんですが…」    「たまには私も一人で頑張りますよ…!」    「それはともかく…! これらの神話には、とある共通のキーワードがあります。     1つ目、創世神が空から降りてくること     2つ目、神の故郷は星辰の彼方、つまり宇宙であること     3つ目、銀色の物質が登場すること     4つ目、神々は最後には必ず姿を隠し、その後に混沌の時代が訪れること」    「語り継がれなくなった主な理由は、4番目のようです」    「神は人を作っておきながら、それを見捨てて消えてしまう。     故に、世には混沌が満ち、人々は大いなる苦難へ直面した…」    「銀がよく出てくるんですよね…。     銀色の棒、銀色の鉱物、銀色の物質…何故銀なのかはわかりませんけど…。     もしかして本当にいあいあなアレなんでしょうか…発狂とか嫌ですよ…!」    「あ、それからもう一つ――大戦争についての話も見逃せないところです。     神が降り、世界が生まれ、地には人が満ち、世は楽園。     そこに突如として悪魔が現れ、神と人類の連合軍と大戦争を繰り広げたんだそうです。     結果として悪魔は滅ぼされたものの、楽園は失われ、神と人は降誕の地を捨てて長い旅に出たとか…」    「なんというか、エクソダスって感じですね…」    「単なる失われた神話とも、史実を基に作ったとも考えられますけど、     一つ確実なのは――核心に到るにはあまりに情報が足りないってことですね」    「何せ数千年以上も前なので…一部の共通点以外は、皆好き勝手に言ってるんです。     人類は神の子孫だと言ってみたり、神は一度去ったけどやっぱり戻ってきたと言ってみたり、     神と悪魔の混血がヘイトレッドだと言ってみたり、神は死んだと言ってみたり」    「そんなところで、昔話は終わりですよ…!」 ---- ***クスクスチャンネル・ジョーク集   クスクスタワーのテレビで流れてた番組    モニター「なぁなぁ、さっきからずっと呼びかけてるんだが、          何回やっても返事が返ってこないんだよ」    モニター「ひょっとして、あいつら全員ハーテリィドに…」    モニター「何を言ってるんだ、返答が無いのは当然だろ?」    モニター「俺たちの使ってる無線機は、          あいつらより3ヶ月も前に作られたんだ」    モニター「これだけ時間が空いてれば、通じないのも当然さ」    モニター「それもそうだな!」    モニター「最近、配給が滞っている。          特に砂糖などの嗜好品は、いつまで経っても“生産が遅れている”ままだ」    モニター「堪りかねた民衆は、砂糖工場で働く男の家に押しかけた」    モニター「おい、お前ら!          ひょっとして、自分達で全部舐めてるんじゃないだろうな?」    モニター「まさか」    モニター「男は肩を竦めて頭を振った」    モニター「作っても作っても、完成直前で軍に持ってかれるんだ。          だからいつまで経っても生産が終わらないのさ」 ---- ***イシュメル新報、6月1日号外    メディ・ムンドゥスの王都イシュメルの新聞記事     帝都大火災の裏側に潜む、謎の勢力による陰謀の気配。     イシュメル新報、6月1日号外     突如として牙を剥いた大火により、帝都中が恐慌状態に包まれたかの夜。     騒乱の影にまぎれるようにして囁かれた、得体の知れない噂をご存知だろうか?     曰く、屋根の上を恐るべき速度で移動する人影を見た。     曰く、その人影は大量の泡でもって火災を迅速に消滅させた。     曰く、それは一見して普通の女であった     実に奇怪極まりない噂話であり、賢明なる常識人でならば、     酔っ払った冒険者の戯言として軽く笑い飛ばすべき内容だ     しかし、一方ではこんな噂もある     曰く、あの業火の中を自在に動き回る怪しげな人影を見た。     曰く、その人影はあちこちに火の粉をばら撒き、瞬く間に楽園を焔の底に沈めた。     曰く、それは正体不明の黒い装束を身に纏っていた     そして、本誌記者は綿密かつ迅速な取材の末、極めつけの噂を掘り当てる事に成功した     曰く――     その女と黒衣の者は、巨大な炎の竜巻と奇妙に煌く泡を衝突させ…そして、諸共に消えてしまった…     そう、消えてしまったのである。     この壮大なる対決の幕が降りた時には、両者共に跡形も無く消え失せていたのだ     一連の騒動と重ね合わせてみれば、これが尋常ならざる者達による行いである事は明らかなのだ     よって、ここに本誌は宣言する     この帝都には、一般には知られていない闇の勢力が存在し、     それらは互いに敵対する関係にあるのだ――と     そう考えてみれば、今回の火災の原因は単純明快である。     我々は要するに、その2つの勢力の争いに巻き込まれたのだ     残念ながら、今回掴んだ情報は以上である。     だが、我々は如何なる妨害にも屈さず、常に真実の追究者として活動してきた。     その方針は今後も変えるつもりは無い     だからこそ、これは…そう、一種の宣戦布告なのだ。     この街で暗躍する名も知れぬ者達への、“必ずやお前たちの陰謀を白日の下に晒してやる”――という     なお、この件に関する情報の提供は、今後とも今まで通り歓迎する。     内容によっては相応の謝礼も考えているので、     思い当たる点がある読者の方は気軽に編集部を訪ねて頂きたい     ちなみに、“本人達”からの意思表示も歓迎である… ---- ***水神クアタトに関する逸話    ヒュドルニオンの行政庁舎でミシェーラが聞いた話聞いた話     わかりました、じゃあ細かくお話ししますね     まず、この本の現在の在り処ですけど…。     この行政庁舎の中にある図書館の、非公開書庫内にしまわれているそうです     というのも、以前はある人物の所有だったそうなんですが、     どうやら家族も親しい知り合いも居ない人だったらしくて、全ての遺産を市に寄贈してしまったとかで…。     自動的に図書館行きになったみたいです     その人の名前は、アンゼルム・ヴェルダーホーフ。     セクンダム・アウローラ市の建設計画を主導した人物にして、第一帝国の初期から存在する名家の出だったそうです     ただ、名家といっても、一族としてはすっかり没落してしまっていたらしくて…。     彼の死と同時に断絶してしまったとか     ともかくも、アンゼルムさんは亡くなり、ヴェルダーホーフ家は断絶し、     その資産の全ては市の物となりました。     そしてその中には、水神クタアトも含まれていたんです     やがて、他の書籍と共に図書館に送られたクタアトですけど…。     一般にも貸し出されるようになった頃から、奇妙な事態が多発し始めます     たとえば、興味半分で見た子供が卒倒し、その後数日間悪夢にうなされ続けたり…。     図書館に立ち入った人々が妙な威圧感の存在を訴え始めたり…     でも、ここまでは大事という訳でもないので、     図書館側も単なる噂程度にしか捉えていなかったそうなんですが…     ある日遂に事件が起こります     市街地のどこかで異臭騒ぎのようなものが起きて、     警察が家の中に踏み込んだところ…     水浸しの部屋の中で、男性が1人死んでいたそうなんです。     胸には例の本を抱いて、恐ろしい形相で目を剥いて…     結局、この一件は自殺として処理されたそうなんですが、     これはさすがにおかしいという話になって、遂には未公開書庫に押し込められて…     以降、今まで放置状態なんだそうです ---- ***誰かの日記   アーフィル・アル=マクバルのボロ船で見つけた、誰かの日記    (“5月22日”)    (“遂にこの日が来た。      政府が全ての航路の閉鎖を命じたのだ。      覚悟はしていたが、いざ目の当たりにするとショックが隠せない”    (“客船としての運命を捨て、言われるままに輸送艦としての任を果たしていたのに。      これからは、海に出る事さえ叶わないのか”)    (……。     なんだか、凄く愚痴っぽい日記ですね…)    (あ、それから…。     手記の内容から、この世界が滅んだ原因が分かりました)    (ハーティリドです…。     これはもう、確定ですね…)    (この世界とナジェージヴァストークは、明らかに繋がりがあります) ---- ***オリンポス技術大学の緊急会見    ルーナ・サプリメイションで発見された、銀色の物質についての会見    「では、今回の事態に関して、より詳細な報告を申し上げます」    「本日、5月25日の標準時15時03分。当大学の高エネルギー物理学研究棟の3階で小規模な爆発が発生しました」    「当初、爆発が生じた理由は不明でしたが、その後の警察による聞き取り調査の結果、とある事実が判明致しました」    「爆発発生当時、大本となった研究室を利用中だった、当大学物理学部教授のフェリックス・サムフォードは…」    「構内のコンビニエンスストアで購入した弁当を、研究室備え付けの電子レンジで加熱しようとしたところ…」    「誤って、実験試料を電子レンジ内に置き忘れ…」    「そのまま加熱するに到ったところ、電子レンジが突如として炸裂し…」    「現在報道されているような、爆発事故へと発展した訳であります」    「…しかし、この緊急記者会見の意図は謝罪ではなく、間違いなく人類史に刻まれるであろうこの発見を、皆様と共に分かち合う為のものであります」    「端的に申し上げれば、先程の爆発事故には再現性があるのです」    「より詳しく説明致します」    「先刻の爆発事故より後、我々は幾つかの実験を緊急に実施しました。     その内容は、置き忘れられた試料――“ガリレオより発掘された銀色の物質”へ、“ある程度以上の出力のマイクロ波を照射する”というものです」    「その結果、一つの結論が導き出されました」    「“銀色物質”には、高出力のマイクロ波の照射を受けた場合、通常考えられない量の発熱を来たす性質があるのです」    「マイクロは照射に要したエネルギーより、遥かに莫大な量の熱を――です」    「この結果は熱力学の第一法則に反するものです。つまり――この物質は、エネルギー保存の法則を凌駕し、“何も無い場所からエネルギーを生み出している”のです!」    「これは永久機関の発見に他なりません!」 ---- &link_back() ---- メモ  ミシェーラが入手・閲覧した文章のうち、未分類のもの  テキトーに放り込んであります  

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