Hip,hip,hip,hourra! 第一幕

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暗い闇、深い闇。

闇の奥底に、記憶は眠る―・・・





















どんよりとした曇り空。
昼前までの太陽が幻であったかのように、空が突然雨を降らして・・・

憂鬱な気分を助長する。

今日は色々とツイていない。
傘も持ってきていないし、こんな土砂降りの雨の中をどうやって帰ればいいんだろう・・・?


「・・・子」

「・・・え?」

「恵子!どうしたの?ぼーっとして・・・」

「・・・あ、ごめん。」

「何か、今日は元気ないね。何かあった?」

「ううん、何も・・・ほら、雨の日ってどことなく憂鬱になるっていうか・・・そんな感じ、しない?」

「そう?まぁ、分からなくもないけど・・・」


彼女は、同級生の実咲。
小学5年生からの友達で、一番の親友だ。


「恵子、そろそろ帰ろうよ。下校時間過ぎちゃったし」

「うん・・・ねえ、事務室で傘、貸してもらえないかな?」

「傘?やめときなよ、事務室で物借りるなんて。」


生徒は殆ど帰ってしまって、静まりかえる廊下を歩きながら「事務室の先生は色々口煩いって、生徒の間じゃ有名だよ?」と苦笑いする実咲に、困り顔で肩を落とす。


「でも、この雨じゃ帰れないし・・・」

「傘、忘れたなら、私もう一本持ってるし・・・ほら、これ使って?」

「えっ・・・いいの?」

「いいのいいの、困った時はお互い様でしょ!」

「・・・ありがとう。」


靴箱で靴に履き替えると、渡された折りたたみ傘を開く。

現れた明るい水色に少しだけ心が晴れやかになった。

すぐ隣で白い傘が開き、ぽつんと描かれた四つ葉のクローバーを見つけて

彼女らしい傘だな、と改めて思う。


「じゃ、私今日は駅の方だから。また明日ね」

「うん。塾、頑張ってね。」

「ありがと!」


太陽のような笑みを浮かべ、彼女は駅の方へ走っていった。












「うわ、もう暗くなってきちゃった・・・」


私は学校から家まで、すこし長い距離を徒歩で行き来している。
今日は学校を出る時間が遅かったのと、相変わらず空に漂う雨雲のせいで
あっという間に日が沈みそうだ。


「早く帰らなきゃ・・・」






『お嬢さん』


・・・え?







『お嬢さん』



普段から人通りの少ない道で、男の声が聞こえる。
お嬢さんって・・・まさか、私?





『お嬢さん』


壊れたラジカセのように「お嬢さん」と言葉を発し続ける男。


(変質者だったらどうしよう・・・)


不安に駆られ、ちらりと後ろを見遣る。


『お嬢さん』


遠くに黒い影が立っている。
おかしい。声はこんなに近いのに・・・

(誰…?何で私に・・・)

何故かどうしても気になって、遂に意を決して振り向く。


「っ!!」

『お嬢さん』


耳元で声が響き、すぐ目の前にそれは立っていた。

驚きで心臓が煩く跳ねる。声が出ない。

男は手を伸ばし、私の頭に触れた。
「触らないで!」と叫び、悲鳴を上げて逃げ出したい気持ちは山々なのに・・・!


『お嬢さん、君が・・・』


パニック状態の私の心境などお構いなしに、男は一方的に言葉を続ける。


『君が、次の・・・・・・だ・・・』


「え・・・?」



やっと声が出たと思った刹那、世界が歪む。


(何、これ・・・どうなってるの・・・?!)













ぐにゃりと曲がる景色に気持ちが悪くなって、どうしたらいいのかわからない。

落ちていく感覚と、項を生暖かい空気が撫でるのを感じながら、私は意識を失った。