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 ※現代日本にゆっくりがいる設定です。
 
 
 
 東京も西部の都下ともなれば、まだまだ自然は残っている。
 そこには、開発中のマンションや分譲住宅に隣接して、かつてのままの里山や丘陵が広がっていた。
 
 そんな丘陵地帯の一画、小さな洞窟の中で、すやすや寝息をたてている者がいる。
 
 ずんぐりむっくりした幼女体型に、ふくよかな手足。
 大きな下ぶくれ顔と、背中に生えた小さな羽。
 
 ピンク色のおべべを纏い、ぼろぼろの毛布にくるまっているその存在は、
 いわゆる胴体有りのゆっくりれみりゃ、通称"ゆっくりゃ"だった。
 
 「うー……ぽかぽかだどぉ……しゃくやぁー♪」
 
 そう寝言を呟いたれみりゃは、身長1mほど。
 毛布の下では、寄り添うように50cmほどのれみりゃが2匹眠っている。
 
 洞窟の入り口は枝や落ち葉や、人間が捨てただろうビニールシートで塞がれており、
 外敵からの発見と、雨風の侵入を防いでいた。
 
 季節は2月上旬。
 このれみりゃ達は、冬眠中の親子だった。
 
 「……う~?」
 
 ふと、一番体の大きい、親にあたるれみりゃが、むっくりと上半身を起こした。
 眠そうな目をしばしばさせて、丸みを帯びた柔らかい手でごしごし擦る、れみりゃ。
 
 「うぁ?」
 
 れみりゃは、首をひねってあたりを見回す。
 巣の中の様子は、眠りにつく前のまま、異常は無い。
 
 けれど、れみりゃは確かに変化を感じていた。
 それは、気温の変化だった。
 
 れみりゃは立ち上がり、6畳間ほどある空間を一周した後、リズムを刻むように体を左右に揺らす。
 体に異常は無い、活動するのに問題は無い。れみりゃは、一つの結論を導きだした。
 
 「うっうー♪ はるがきたどぉー♪」
 
 暖かな春の到来を喜び、歓声をあげるれみりゃ。
 その声に反応して、毛布の中にいた2匹の子れみりゃ達も目を覚ます。
 
 「う~? まんまぁー、もうおきてもいいどぉー?」
 「まんまぁー♪ おはようさんだどぉー♪」
 
 起きあがり、親れみりゃの下へ集まる子ども達。
 親れみりゃは、そんな子ども達の頭を撫でながら、顔をほころばせた。
 
 「う~~♪ れみりゃのあがじゃん、あいかわらずかわいいどぉ~♪」
 
 無事冬を越え、こうして温もりにつつまれる幸せ。
 れみりゃ達は、その幸福感を胸いっぱいに感じ、久方ぶりのダンスを踊り出す。
 
 「「「うっう~☆うぁうぁ~♪ れみ☆りゃ☆う~~♪」」」
 
 にっぱぁー♪
 そんな擬音が洞窟の中では確かに響いていた。
 
 「うーうー♪ れみりゃだぢのかわいいさに、はるさんもめ・ろ・め・ろになるんだどぉー♪」
 
 大きなお尻を左右に振るれみりゃ達。
 
 やがて、ダンスが一段落すると、れみりゃ達は身支度を始めた。
 暖かな春を満喫し、ぐるぐるきゅーきゅーなお腹を満たしに行こうと。
 
 「う~♪ ぷっでぃ~ん♪」
 「「ぷっでぃ~ん♪ ぷっでぃ~ん♪」」
 
 れみりゃ達は、大事にしまっておいた子ども用の傘をそれぞれ手に持ち、
 親れみりゃのみ、幼稚園で支給されるような幼児用ポシェットを肩からかけた。
 
 「じゅんびおっけぇーだどぉー♪」
 「まんまぁー、おしゃれさんだどぉー♪ とぉーってもえれがんとだどぉー♪」
 
 日傘も、ポシェットも、冬を越えるために身をくるんでいた毛布も、
 全ては人間の街で苦労して集めたものであり、とってもゆっくりできる自慢の品々だった。
 
 「うー☆いっくどぉー♪」
 「「うっうー☆」」
 
 れみりゃ達は入り口を塞いでいたバリゲードを解き放ち、
 親れみりゃを先頭に外へと躍り出る。
 
 かわいいかわいい自分たち。えれがんとでかりしゅまな自分たち。
 こんなにゆっくりできる自分たちを、世界はきっと祝福してくれるに違いないと信じて。
 
 
 だが。
 
 
 
    *   *   *
 
 
 
 「う~~~! ざむいどぉ~~~! どごにもごぁんがないどぉ~~~!」
 
 寒風吹きすさむ林の中、れみりゃ達は三者三様に寒空に叫びをあげていた。
 
 「まんまぁーはうそづぎだどぉー! ぢっどもぽかぽかじゃないどぉー!」
 「う~~! れみぃはぽんぽんがきゅーきゅーなんだっどぉー! まんまぁーなんどがじでだどぉー!」
 「う~~! あがじゃん、ごめんだどぉー! ごめんごめんだどぉーー!!」
 
 林の木々の間を、パタパタ小さな羽を動かして飛んでいくれみりゃ達。
 その顔は、涙と鼻水らしきものでぐしゃぐしゃになっている。
 
 「どぉーじでだどぉー! うぁーーん! さくやぁー! さくやぁーどこぉーー!?」
 
 寒さと空腹と、子ども達から責められる状況に、
 とうとう親れみりゃはぺたんと地面に座り込み、泣き出してしまった。
 
 そんな親の姿を見て、失望したのは子ども達だ。
 
 「う~、まんまぁー、やくたたずだどぉー……」
 「まんまぁーはだめりゃだったんだどぉ……れみぃたちはこうなっちゃだめなんだどぉー……」
 
 親れみりゃの情けない姿を見た子れみりゃ達は、怒りと落胆を露わにして、その場を後にする。
 
 「う、うぁ? ま、まつんだどぉ~~! れみりゃのあがじゃぁ~~ん!!」
 
 親れみりゃは叫ぶが、子ども達は振り向くこともなくパタパタ飛んでいってしまう。
 
 「あがじゃぁ~~ん! れみりゃのあがじゃんがぁ~~~! うぁぁぁ~~~~!!」
 
 何とかしなければ。後を追わなければ。
 親れみりゃはそう思って体を動かそうと思うが、どうしても立ち上がることができない。
 
 どうしようもない悲しみや疲労感が全身を支配してしまい、
 結局その場でだだっ子のように四肢をジタバタさせることしかできなかった。
 
 「うっぐ、ひっぐ……どぉーじてだどぉー……まんまぁーうそつきさんじゃないどぉー……」
 
 そう、確かにれみりゃは気温の上昇を感じていた。
 事実、巣の中は温かかったし、巣を出てすぐは寒い風も吹いていなかった。
 
 れみりゃが知る由も無いが、原因は温暖化に端を発した都市部の異常気象にあった。
 れみりゃ達が目を覚ました日、確かに気温は20度近くの春先の気温になっていた。
 けれど、それはあくまでイレギュラー。季節は2月であり、一晩も経てば寒の戻りはすぐにやってきた。
 
 熊などの本来冬眠する動物が、冬半ばにも関わらず目を覚ましてしまうのと同様のことが、
 このれみりゃ達にも起こっていたのだ。
 
 「れみりゃ、もうおうぢにがえりたいどぉー……」
 
 れみりゃはクタクタになった体を起こして、とぼとぼ地面を歩いていく。
 
 口ではなんと言おうとも、やはり子ども達のことは気になる。
 れみりゃは、子ども達が去っていた方へ向かって足を進めた。
 
 やがてれみりゃは、丘陵の切れ目、人間の街の前まで来てしまう。
 
 「う~~、こっからさきはこぁいひとがいっぱいなんだどぉ~~……」
 
 木の陰に隠れながら、人間とその街を眺めて、尻ごむれみりゃ。
 れみりゃは以前、遊び盛りの人間の子ども達に"いじめられた"ことがあった。
 
 それ以降も街へ食べ物や道具を探しに行くことはあったが、
 そこを行き交う人間達は忙しなく、ちっともゆっくりしていない。
 それに、自動車に電車に、野良犬にと、命をおびやかしかねない危険も後をたたない。
 
 故に、れみりゃは人間の街へは出来るだけ行きたくなかった。
 
 しかし、そんな経験の少ない子れみりゃ達は、
 恐れることなく人間の街へ行ってしまったのかもしれない。
 
 れみりゃは意を決して、街へ行くことにする。
 
 「うぁ! おあたま☆ぴっかぁ~んだどぉ!」
 
 街への潜入計画を思いつき、れみりゃは喜びを声に出す。
 
 れみりゃのすぐ目の前に、段ボール箱が積み重ねられていたのだ。
 これの中に隠れながら行けば、きっと安全だとれみりゃは考えた。
 
 「れみりゃってば、やっぱりてんさいだどぉー♪」
 
 がさごぞと、段ボール箱の中に入るれみりゃ。
 段ボール箱は大きく、少し窮屈ではあったが、すっぽりれみりゃが隠れることができた。
 
 「うぁ? なんだかいいにおいがするどぉー?」
 
 くんかくんかと、鼻をならすれみりゃ。
 積み重なった他の段ボールから、甘くて美味しそうな臭いがしてくる。
 
 「う~♪ あまあまのにおいだどぉ~♪」
 
 お腹をならしながら、ひととき幸せに包まれるれみりゃ。
 早く子ども達を見つけて、一緒に美味しいぷっでぃんを食べたいなぁーと、れみりゃは口角からヨダレを垂らした。
 
 しかし、そんな夢想をしていたが故に、れみりゃは気づけなかった。
 いつの間にか、自分が入っている段ボールが、積み重なった段ボールが、地面ごと動き出していることに。
 
 れみりゃが隠れた段ボール、それは、トラックの荷台の幌の中に積まれた段ボールだったのだ。
 
 「う~? どぉーしてじめんがぐらぐらだどぉ~?」
 
 トラックは、れみりゃを荷台に載せていることになど気づきもせず、
 またれみりゃ自身も自分の置かれた状況に気づきもせず、とある店へと運ばれていった……。
 
 
 
    *   *   *
 
 
 
 数十分後。
 うたた寝から目を覚ましたれみりゃは、ようやく異常に気付いた。
 
 「う、う~~? ここどこぉ~~!?」
 
 段ボール箱の中から、うんしょうんしょと這い出てきたれみりゃは、周囲の風景を見て目を丸くした。
 そこは見知った林の中でも、先ほどまで眺めていた人間の街並みでもなかった。
 
 たくさんの段ボールに囲まれたそこは、お菓子工場に隣接している倉庫だった。
 うっすら甘い匂いの立ちこめる中、れみりゃは他の段ボールを開けてみた。
 
 もしかすると、自分と同じように子れみりゃ達もいるかもしれない。
 そんな楽観的な思いからでた行動だったが、段ボールの中には予想外のものが入っていた。
 
 「うー♪ あまあまだどぉー♪」
 
 箱の中には、包装されたチョコレートが入っていた。
 れみりゃは顔を笑顔満面にして、次々に段ボールを開けていく。
 すると、中にはキャンディーにケーキにクッキーにと、次々お菓子が出てきた。
 
 「これもぉー♪ これもぉー♪ うぁーうぁー☆しゅっごいどぉー♪」
 
 お菓子の山に囲まれて、興奮するれみりゃ。
 ぐぅ~☆というお腹の音に促されて、れみりゃはビリビリ包装を破り捨てて、さっそくそれにかぶりつく。
 
 「うっう~☆いっただきまぁ~す♪」
 
 むしゃむしゃ。
 ばくばく、もしゃもしゃ。
 
 次々にお菓子を口へと運ぶれみりゃ。
 しかし、べとべとに汚れていく口の周りとは対照に、れみりゃの笑顔は徐々にくもっていた。
 
 「……う~~?」
 
 そして、とうとう手に持っていたお菓子を床に置き、れみりゃは首を傾げてしまう。
 
 「う~~! このあまあま、おいしくないどぉ~~!」
 
 そう、チョコレートもケーキもクッキーも、どれもこれみれみりゃの舌を満足させるものではなかった。
 
 お腹はすいているはずなのに、大好きで、滅多に食べられないごちそうのはずなのに、
 そこにあるお菓子はどれもイマイチの味で、れみりゃにはちっとも美味しく感じられなかった。
 
 「う~! これだからにんげんってやくにたたないんだどぉ~!」
 
 立ち上がり、ぷんぷん頬を膨らませる、れみりゃ。
 れみりゃは、自分の立場を忘れて、お菓子を作った人間に文句を言ってやろうと工場をパタパタ飛んでいく。
 
 「しょーがないどぉー♪ れみりゃが、とくべつに"あまあま"のなんたるかをおしえてあげるどぉ~♪」
 
 きょろきょろ工場内を見て回るれみりゃ。
 だが、工場内に人の姿は無く、誰に会うこともなく、いつのまにか厨房のようなところに出てしまう。
 
 「おかしぃーどぉー? なんでだれもいないんだどぉー?」
 
 れみりゃは、パタパタと机の上にのぼり、そこに座りこむ。
 
 「うー! こーまかんのおぜうさまがおよびだどぉー! さっさとだれかくるんだどぉー!」
 
 どたどた、だばだば。
 れみりゃは、手足を振り回すが、その呼びかけに応じる者はいなかった。
 
 「うぁ? ちょこれぇーとだどぉ♪」
 
 代わりに、れみりゃはキッチンの片隅に置かれた大量のチョコレートに気付き、そこへ近寄っていく。
 チョコレートはそれぞれ皿に載せてあり、それぞれABCD……と書かれたカードがそえられていた。
 
 「うっびぃ~~! これ、どれもにがにがだっどぉ~~!」
 
 チョコレートはどれも独特の形や色合いをしていたが、
 そのどれもが、苦かったり、舌触りがじゃりじゃりしたりするものばかりだった。
 
 「まじゅいのぽぉーい♪ にがいのもぽぉーい♪ ぽいするの、ぽぉーーい♪」
 
 れみりゃは、一口食べては、"まずくて苦い"チョコレートをポイぽい投げて床に捨てていく。
 
 そこに置かれていたチョコレートは、お菓子工場の新製品候補の試作品だった。
 けれど、どれもこれも今ひとつの出来だったため、そのまま放置されてしまっていたものだ。
 
 このお菓子工場は、以前は小さいながらも街で有名な洋菓子屋だったが、
 近年の不況と大手メーカーの台頭で、売り上げは落ち、社員は減り、すっかり寂れてしまっていたのだ。
 
 現に、れみりゃが運ばれてきた段ボール箱や、倉庫に積まれていたお菓子も、
 売れ残ったりクレームがついたりして戻されたものだった。
 
 このお菓子工場は、まさに閉店寸前だった。
 
 「うぁ☆そうだっどぉー☆」
 
 れみりゃは顔をパァーと輝かせて、肩にかけているポシェットを開けた。
 そしてれみりゃは中から使いかけのクレヨンと、お絵かき帳を取り出した。
 
 「うーうー♪ こぉーしてぇー☆こぉーしてぇー♪」
 
 れみりゃはクレヨンをグーで握り、
 お絵かき帳の白いページに、お菓子の絵と、慣れない平仮名を書いていく。
 
 「う~~♪ おいしそうだどぉ~♪ れみりゃは、てんさいこっくさんなんだっどぉ~♪」
 
 それは、れみりゃが思い描いたお菓子と、それの作り方だった。
 もちろん、それは文字通り絵に描いた餅であったし、作り方も"あまあまをいっぱい~"等の要領を得ないものだ。
 
 けれど、れみりゃはそんなこと気にせず、一生懸命お菓子の絵と、作り方を書いていく。
 それは、"特別におぜうさまがお菓子作りを教えてあげる"という、れみりゃなりの親切心であった。
 
 「う~♪ かんぺきだっどぉ~♪」
 
 れみりゃは、そこらじゅうにクレヨンで描いたお菓子の絵を散乱させ、満足そうにそれらを眺めた。
 "うぁうぁ☆うーうー"とダンスを踊り出し、喜びを表現する、れみりゃ。
 
 が、しばらくすると踊りをやめて、しょぼんと肩を落としてしまう。
 その脳裏には、お菓子を一緒に食べるべき可愛い子ども達の姿があった。
 
 「うー……ぷっでぃ~ん、あがじゃんといっしょに、たべたいどぉー……」
 
 れみりゃは蹲り、やがて前のめりになって自らのふくよかな腕に顔を埋める。
 腕の奥、隠された顔からは時折嗚咽が聞こえてきた。
 
 そのままれみりゃが眠ってしまうのに、さして時間はかからなかった……。
 
 
 
    *   *   *
 
 
 
 「……ったく」
 
 お菓子工場の主は、不機嫌だった。
 作る新製品は不評続きの返品続き。
 
 クリスマスの際に勝負に出るも失敗して、今も銀行に融資を断られたがかりだ。
 直に迫ったバレンタインデーで持ち直せなければ、倒産も止むを得ない。
 
 ……だというのに、バレンタイン用の新製品の開発は、難航していた。
 アイディアは枯渇し、焦燥と貧困が、負のループへと男を誘う。
 
 「どうにか……どうにかしないとな……」
 
 男は、ブツブツ呟いては、ひとり毒づく。
 
 そんな男の腕には、子供のゆっくりれみりゃが抱えられていた。
 
 「「まんまぁー!!」」
 
 帰り道、お菓子の匂いの染み付いた作業着に誘われたのか、
 男の前に現れて"あまあま"を要求してきたのだ。
 
 「う~! やめるんだどぉ~! れみぃたちをはなすんだどぉ~!」
 「まんまぁー! ごぁいひどがいるどぉー! れみぃたぢをたずけてぇー!!」
 
 男はジタバタ暴れる子れみりゃ達を抱えたまま、
 足で扉を開けて、工場の中へ入っていく。
 
 「ほら、しばらくここで待ってろ」
 
 男は工場の事務所へ行き、ソファの上に子れみりゃ達を放り投げる。
 
 「うぁ!」
 「ぷんぎゃ!」
 
 子れみりゃは、それぞれ顔とお尻からソファの上に落ちて、叫びをあげる。
 そして"う~~っ"と涙声をあげて、互いの震える体を抱き合った。
 
 「いま何か食うもん持ってきてやるよ……甘いものなら嫌ってほど余ってるからな」
 
 男は怯える子れみりゃ達に背を向けて、自嘲する。
 
 男は子れみりゃに余ったお菓子をあげるつもりでいた。
 相手が誰であれ、お菓子を売る者が"あまあま"を要求されたのだ。
 どうせ返品されて捨てるものがあるのだから、それを渡さない理由も無い。
 男はそう考え、子れみりゃ達を連れてきたのだった。
 
 「……うん?」
 
 男は倉庫に入って、首をひねった。
 返品されたダンボールが開けられ、あたりにお菓子が散らばっているではないか。
 
 「悪ガキどもでも入ったか?」
 
 男は、倉庫の奥に作られた、新製品開発用の厨房の扉が開いていることに気付き、そこへ足を進めていく。
 捨てる物とはいえ勝手に倉庫に入って荒らされてはかなわない。
 男は、その犯人をしかりつけてやるつもりだった。
 
 しかし、男は厨房に入った瞬間、呆然とした。
 
 「なんだこりゃ……」
 
 厨房の中には、お菓子の絵とその説明の書かれた画用紙が散乱していた。
 その子供の落書きのようなものを手に取った瞬間、男は体内で電流が走った気がした。
 
 落書きにしか思えないお菓子の絵。
 しかし、そこには一切の既成概念が無く、アイディアに行き詰っていた男には、衝撃的なものであった。
 
 「これは……!」
 
 画用紙を拾う度に、インスピレーションの雷が男の脳裏に走る。
 男は、興奮を隠せない。そして……。
 
 「……こいつが、これを描いたのか?」
 
 画用紙を持ったまま、目の前で寝ているソレを眺める男。
 そこでは、すやすやと寝息をたてている親れみりゃがいた。
 
 「……う~♪ あがじゃ~ん、ぷっでぃ~んだどぉ~♪」
 
 
 
    *   *   *
 
 
 
 東京都下、街外れの丘陵の一角。
 そこにある小さな洞窟の中では、寒さに負けず今日も愉快な声が響いている。
 
 「「「うっう~☆うぁうぁ~♪ れみ☆りゃ☆う~~♪」」」
 
 洞窟の中で、ふくよかな腕をぐるぐる回し、大きなお尻をぷりぷり左右に振る3つの影。
 それは、ゆっくりれみりゃの親子だった。
 
 「にっぱぁ~♪ かわいいあがじゃんに~☆まんまぁからぷれぜんとだどぉ~♪」
 
 親れみりゃは、包装紙とリボンでラッピングされた長方形の箱を子れみりゃ達に渡す。
 子れみりゃ達はそれを受け取り、箱を掲げてはしゃぎまわった。
 
 「まんまぁーありがとうだどぉー♪」
 「やっぱりまんまぁーはかりしゅまおぜうさまだどぉー♪」
 「う~~♪ それは、ばれんたいんでぇーのちょこれぇーとなんだっどぉーぅ♪」
 
 親れみりゃは、子れみりゃの頭を優しく撫でて髪をとかしてやる。
 
 「う~☆なでなでぇ~きもちいいどぉ~♪」
 「いいこいいこ~、だ~いしゅきぃ~♪」
 
 親子の抱擁と、団欒のひと時。
 しばらくすると、親れみりゃは外出の用意を始めた。
 
 「うっうー☆まんまぁーはおでかけしてくるどぉー♪」
 「「いってらっしゃいだどぉー♪」」
 
 挨拶を済まし、洞窟から出る親れみりゃ。
 れみりゃは、小さな黒い羽をパタパタ動かして、ゆっくり低空を飛んでいく。
 
 手には子供用の傘を、肩には幼稚園児用のポシェットをかけて。
 そして、だいじだいじなピンク色のお帽子には、新たにバッジが付けられていた。
 
 バッジには、最近街で話題の洋菓子店のマークと住所、
 そして"新商品開発担当れみりゃ"という役職が書かれていた。
 
 「うぁうぁ☆うっうー♪ れみりゃは、おかしやさんのおぜうさまだどぉー♪」
 
 
 
 
 おしまい。
 
 
 
 
 ============================
 どうも、お久しぶりです。
 タイトルは「アナトール工場へ行く」のオマージュだったりします。
 
 本当はもう少し練りたかった部分もあったのですが、
 時事ネタなのでバレンタインデーに投下させていただきます。
 
 ……はぁ、朝起きたらラッピングされたれみりゃが部屋に居て、
 「う~♪ぷれぜんとだどぉ~♪」と言ってくれたいなと思いつつ。
 
 by ティガれみりゃの人
 ============================
 
 - 途中雲行きが怪しくなりましたが…偶然とは恐ろしい。 &br()俺もこのれみりゃみたいに仕事で何か当ててやりたいですよ。  -- 名無しさん  (2009-02-16 02:02:10)
 - 普通に読んでも楽しめるうえ、温暖化による生き物への影響についても考え &br()させられる良いSSだと思います。 &br() &br()あと、この作者のれみりゃ種を可愛く書く仕事ぶりには脱帽。  -- 名無しさん  (2009-02-16 18:07:42)
 - アナトール…めちゃくちゃ懐かし過ぎるわ…。教科書で読んだ記憶が…。  -- 名無し  (2009-02-19 21:58:37)
 - この文章の巧みさは、やはり経験の差か…… なんであなたの書くれみりゃはかわいいんだ!  -- 名無しさん  (2009-02-19 22:16:26)
 - アナトール!一瞬で思い出したww 小だか中学校の国語教科書に載ってたましたな…。 &br()『ねずみのアナトールが夜な夜なチーズ工場に行き、チーズの批評をして感想を書き置き &br()それを参考においしいチーズを作れて立て直す』そんな感じでしたっけか。 &br() &br()しかしこの菓子職人お兄さん(w)もなかなかの才能を持ってますなぁ &br() &br()スキ間の裏: &br()「工場」もあい余って「アナハイム」に聞こえたのは俺だけでいいorz  -- 名無しさん  (2009-02-25 16:44:26)
 - イイですねぇ、、、、 &br()私の好きなれみりゃが社会になじんで役に立ってます。 &br()これほどうれしいことはない!!  -- 特定の種だけゆっくり愛でな人  (2009-02-28 16:31:07)
 - いやいや、いくらなんでも肉まん風情にこれは・・・  -- 名無しさん  (2009-04-29 22:02:46)
 - とりあえず楽しい作品でした。  &br() &br()かわいいなぁ……  -- 名無しさん  (2009-04-29 22:47:57)
 - れみりぁを初めてかわいく思った  -- 名無しさん  (2010-06-13 20:04:50)
 - さすがかりすまおぜうさまだな。すばらしい。  -- 名無しさん  (2010-11-28 03:05:29)
+- 私にも仕事を・・・・orz &br()  -- 名無しさん  (2011-04-14 06:01:37)
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