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◇ サイドストーリー ◇






カモメは蒼と青の境を密やかに飛ぶ

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チャーイカ開発を行っていた時期、レンジャー連邦は戦後復興の最中にあった。
なぜ、そんな時に開発を行う事になったのかと思われるだろうが、そもそも機体の開発の計画が持ち上がったのはT16の初め、もう大分前の事になる。
共和国空軍の要人であるカール・瀧野・ドラケンが、この先起こるであろう宇宙での戦闘に向けた機体と、哨戒機によるNWの海へ警戒の目を向ける必要がある、という事を、彼の自宅で妻であるむつきに示唆したことから始まった。


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レンジャー連邦南都ドラケン家/某月某日/晴れ。

「共和国には哨戒機が必要だ、それも長い距離を航行できる。」
「あー…、なるほど。海から来る敵にはまだ対応してなかったね。」
「ああ。」


まず、これが夫婦の日常会話か?という突っ込みは無しである。
航空機を中心とする開発を行って来たエンジニア達にとって、この様な話題が出るのはよくある事だからだ。
南都の静かな郊外にある自宅、落ち着いた雰囲気でまとめられた居間のソファーで、のんびりと午後のお茶を飲みながら、二人はNWに大規模な潜水艦群が侵攻してきた事を思い出す。
あの時は事前に敵の接近を探知する事が出来ず、あわや核攻撃による大打撃を受ける所であり、そして、海からの攻撃はこの先も「無い」とは言えないのが現状である。
(最近の事で言えば、T16、紅葉国にて保有する潜水艦が奪われる、という事件も起こっており、海に対する警戒を行う必要性は、現在も失われてはいない。 )
「海上パトロールはしてるけど…哨戒機の性能にはどうしても劣るわね…。」
宇宙での戦闘に向けた機体についても、二人の間で話題に上がっていた、が、いくらなんでも同時に開発を進める事は色々と難しかった。
むつきは「うーん」と唸りながら腕を組み、どちらを選択すればよいのだろう、と悩んだ。
レンジャー連邦はバッジシステムを保有する共和国空軍の要、順番をつけるなら、宇宙に出る前にNWの防衛を完全にしておく必要を感じていたが…。
「…今度、上に相談してみようか?」
彼女は組んでいた腕を解き、愛用のマグカップでコーヒーを飲む夫へと問う事にする。
希望しているのは自分ではなくてカールだ、そして、哨戒機を作るとなれば、一国に限らず共和の空を飛ぶ事になるだろう。これは国だけではなく、共和国を統べる大統領府にも伺いを立てるのが良い、と考えたむつきはそう夫に提案をした。
「頼む。」
返答は短い。カールはそれだけを言うと再びコーヒを口に運びつつ、ほほ笑んだ。
それは、彼女が自分の願う通り動いてくれるだろう、という経験から来る余裕と、信用しているという証でもある。
「はーい。」
むつきはそれを分かってるのか分かっていないのか、夫の「お願い」にのほほんと返事をし、揃いで作ったカップに残っていたお茶を飲み干すと、嬉しそうに笑って隣に座る夫にぺたりと寄り掛かった。




そこからの彼女の動きは早い。
開発費用となる個人マイルを握りしめて、
「蝶子さんー、長距離哨戒機作ってもいいですかー。」
と政庁を訪れ、
「もっとラブい事にマイルを使っても良いのよ?(笑)」
という藩王の苦笑と共に頂いた、認印付きの書類をゲットし。次に、忙しく働く摂政を捕まえ、各施設の使用許可を取り付け、もちろん大統領府にも、意見や各了承を得るために足を運んだのだった。


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FEG大統領府/某月某日/晴れ。

#「是空さん、私の派生にある長距離哨戒機作っても良いですかー。(もぐもぐ)」
#「おー。あると助かる。(ぐびぐび、もぐもぐ)、まあ、あれだ(ry」
#ガッガガー ピー ※一部秘匿扱いの情報につき、音声が切断されました。
#「……な…るほど; 分かりました。では作りますねー。(もぐもぐもぐもぐもぐもぐ、肉うまうまうまいなー。)」


むつきが訪れたその日の事であるが、彼女の他にも集まっていたメンバーに、後から合流した大統領を加えて、親睦と報告会を兼ねた飲み会が行われている。
その場にいた全員が座れる長テーブルに、間隔をおいて置かれたガスコンロと肉を焼く為に作られた分厚い鉄板、そして、大皿に並べられた肉、肉、肉。それだけではなく、包み菜や数々の副菜も所狭し並べられる中、それぞれ飲み物の入ったグラスを手に取って…
「お疲れさまです!乾杯—!」
という仲間内では毎度お馴染みの音頭と共に、みんなで焼き肉食べようぜ IN 大統領府が始まったのである。
焼ける鉄板に、旨味たっぷりの肉が次々と乗せられ、弾ける脂とニンニクの香ばしい香りが食欲をそそる中進むのは、場にそぐわない重要な話ばかりであるが、笑い話も交えつつ和やかに情報交換が行われた。
むつきも大統領より無事哨戒機製造の許可を貰う事が出来ており、大統領府のメンバーにも認証を受けて安心した所で、じゅーじゅーと焼ける肉を頬張った。
(ちなみに、当時会場で交わされた会話は共和国極秘事項であり、その場にいた人達のみ知る事である…。)


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しかし、それから少しして、事態は一変する。
突然起こったキノウツン藩国のムラマサ達の襲撃により、戦禍に飲まれたレンジャー連邦は、なんとか敗北と滅亡を免れるが大打撃を受け、国内は敵を追い払う為に使用した農薬の影響が残ったままの瓦礫の焦土と化した。
もちろん、むつきもカールも開発をするどころではく、復興支援の為に日夜働く事になる。
深夜、へとへとになりながら避難先に戻り、窮屈な生活にふてくされ不機嫌な飼い猫達に「ごめんね」と声をかける日々。
当時まだゴートホーンが北都に潜伏して建物を壊し、毒を撒き散らしていた事が知られては無く、国内は農薬の匂いと増えて行く瓦礫のせいで、復興が遅々として進んでいなかった。
それは、後日発覚した要人襲撃事件により行われた調査で、全て敵性勢力のせいだったと分かるのだが…。




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レンジャー連邦第2階層空軍基地/某月某日/曇り。

「……………………… ぎー!」
「どうした?」
「わーん! 腹が立つー!」
(あのやろう、うちを要人ホイホイにする気だったんか…! ゆるせん!小石につまずいて盛大にコケればいい…!)


足りない人手を補う為に政策素案を作り、私財を出して各種調査を行い、支援を頂いた各国や団体・個人名を記載したリストを作るなど、とにかくむつきは忙殺されている摂政に代わり、普段した事の無い仕事も引き受け、自国の為に進まぬ復興状況の中、夫と共に国が元気になります様に、と働いて来たのである。
普段は怒りを表に出さない彼女ではあったが、自国を要人暗殺の出汁に使われかけた事に、とにかく腹を立てた。
藩王会議に出席する為に出立の用意をしていた城摂政を捕まえ、大統領府と共和国各国への援軍依頼手続きを頼み込み、そして、えらい勢いでゴートホーン討伐の手筈を整えたのだった。


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レンジャー連邦南都王城/某月某日/雨。

「ところで、ゴートホーンはどこから入ってきたのだろう。港の底に隠れていた、船に取り付いていた、他にも色々あるだろうな。」
「そうですねえ、大型のが退却した時にばらまかれたかもしれないですし、紅葉さんところから奪った潜水艦もあるでしょうし…。」
「それだーーーーーーー!」
「はいー?」


ゴートホーン討伐は、大規模な援軍を頼むまでも無くダガーマンによって撃破され、国内の本格的な復興に向けようやく動きだした深夜の事である。
城摂政の補佐も請け負っていたむつきは、終わりの見えない政務作業に付き合いながら、今度打ち出してゆく政策の素案をノートパソコンで作成していた。
彼女の夫は夫で軍務である国内復旧作業に駆り出され忙しく、彼が迎えに来れる時間まで、政庁で抱えている仕事を終わらせて行く事が多くなっていた。
とりとめの無い雑談をしながらばさばさと書類を倒し、国に潜んでいた敵について考察を巡らせる。
そして、その中で敵性勢力への監視の目が海には届いていない事に再び行きついた。
長距離哨戒機の開発はこの戦禍による動乱で止まったまま。
むつきは考える、もしかしたら作るなら今なのかもしれない、と。


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レンジャー連邦南都ドラケン家/某月某日/晴れ。

「これ、出来上がった図面なんだけど、見てくれる?」
「ああ。」
「で、ね、開発…急ごうと思うんだけど…。」
「…なぜ急ぐんだ?」
「まさか敵もこの復興の最中に開発するとは思ってないでしょうし、海はノーマークだと思わせておきたいのだけど、…カールはどう思う?」
「そうだな…作るのは急がずとも大丈夫だろう。」
「そっか、ん、じゃあ急がないー。」
「…機体は全体的に大きい方がいいな、生活スペースを取ってくれ。エンジンも燃料効率が良ければ充分だ。」
「はーい。」


かくして凍結していた長距離哨戒機の開発は動き出した。
カールが目を丸くする速度で、むつきはあれもこれも仕事の傍らに終わせ、製造段階まで準備を進めていたが、彼の「まあまて」によって一旦ブレーキをかけ速度を緩める。
ここまで準備出来ていれば、後は折を見て製造するだけであったが、二人の住む国は戦後復興の最中、そして、先読みに長けたカールがまだいい、と言うのにゴリ押しするむつきでは無い。
彼女はあっさり了承の返事をすると、手直しが必要な部分を図面に書き込みながら、エヘーとしまりなく笑った。
カールからの返事で、思ったより直しが少なかったのが、嬉しかったのである。




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FEG大統領府/某月某日/晴れ。

「むつきさん、エンジンの事なんですけど、今いいですか。」
「あ、はーい。どうしました?」
「実は、一つ提案がありまして、むつきさんの長距離哨戒機と、これから作るボーイング707のエンジンを共通化してはどうかと思いまして。」
「Σ(´Д`)! 」


復興に終われながらも少しずつ進めていた開発の合間、むつきは図面や仕様書などの最終チェックをして貰うために再び大統領府を訪れ、そこで自分と同じ様に新しい機体の開発を進める無名騎士藩国の藩王に声をかけられる。
彼女は、メカ仲間である彼と共にその場を離れ、フロアごとエレベーターとなっているレストランで下に降りつつ話に耳を傾ける事にし、それぞれが関わっている輸送機と長距離哨戒機のエンジンについて話込んだ。
鋼の王が言うには、長距離移動、燃費良し、非戦闘タイプという部分で一致するエンジンを航空機の技術水準の高い国と共通化する事で、輸送機の性能を向上させたい、と。
もちろん技術共有する事で、レンジャー連邦も無名騎士藩国の技術を取得できる、という恩恵に受けれる様になり、とどのつまりは悪い話では無かった。
そもそも、彼女自身チャーチカを輸送機として将来的に転用する事も考えていたものだから、むしろ願ったり叶ったりと言った所である。
「国内復興もあるし、RL-M01エンジンを取り付けるのは、どっちが先になるかなあ…。」
「それは、それぞれの進行具合でですね。」
「はい。あ、それと、うち先に民間用にライト版出すんですよ。」
「ほう。」
むつきは紅茶を口にしつつ、開発の進行具合を向いの席に座る相手に話す。
国の復興を行っている間は、大掛かりな製造にかかる訳にもいかず、もし、彼女が手掛けたエンジンを輸送機に使うとなったら、製造については自分が先方に赴いて技術指導しながら、実用レベルまでのテストを行う様になるだろう。
そして、同時に航空産業を育成する為に、むつきは国から依頼された民間航空機用エンジンの開発も行っていることを伝えた。
「場合によっては、そちらに私と開発部隊がお邪魔するかもしれませけど、構わないですか?」
「ええ、お願いします。まあ、うちでテストしたデータは哨戒機に使ってもらえば。」
「もちろん、そうさせてもらいますよw」
むつきは彼の言葉に笑い、「藩王と摂政に許可貰って来ますね。」とその場で約束を取り付ける。
どちらが先になるかは、その時になってみないと分からない、しかし、そこは柔軟に対応すれば良い、と判断した二人は笑顔で別れ、それぞれの国へと帰還した。

その後、大統領からと国元よりエンジンの共通化を許可され、彼女が改良したターボファンエンジンは、共和国空軍で広く活躍する事となる。




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レンジャー連邦空軍基地/某月某日/晴れ。

「カール、今回、製造責任者をあなたに頼みたいの、良いかな。」
「ああ、いいとも。」
「ありがとうー、暫くは政庁で補佐してる時間が多いから助かる。」
「こっちは任せてくれ。」
「うん、頼みます。」


関係者だけが入る事の許される開発部隊専用ハンガーの中央で、淡灰色の特殊塗装に、淑やかなブルーのラインを纏った真新しい航空機が、艶やかに控えていた。
空飛ぶ電子の娘『姫シリーズNo.3:チャーイカ:コードネーム:鴎姫』は、忙しく調整を行う軍人整備士達の賑やかさとは対照的に、ひっそりと完成の時を待つ。

大型の機体がすっぽりと納まる広い密閉形のハンガーの中は、チャーイカ開発・製造責任者であるカール・瀧野・ドラケンが、特別大柄な体躯に合わせたつなぎでその身を包み、現場監督として部下達に指示を出したりと慌ただしい。
時には微細な調整を行う為に自ら機体に取り付いて工具を握り、そしてパイロットとしてテスト飛行も受け持つ多忙ぶりだったが、それを上回る多忙の人がハンガーに駆け込んで来たのを見つけ、厳めしい作りの顔を綻ばせる。
「おつかれさまでーす、遅くなってすみませんー。」
その人はよほど急いで来たらしく、息切れで足元がフラフラではあったが、部隊の仲間と挨拶と報告を交わしながら、真直ぐにカールのすぐ側へと歩いて来た。
「ごめんね、会議が長引いて。」
彼女、むつき・萩野・ドラケンは、その名の示す通りドラケン氏の夫人でありながら、普段は空軍整備部隊の現場監督を、政庁では軍相相当(摂政談)として活動を行っている人物である。
そして、表には知られていないが、ここ開発部隊をカールと共に束ねるもう一人の責任者だった。
「いや、問題ない。国内復興の方が優先だからな。」
「うん。今、各国から支援がどんどん来ててね、今日はその報告会と支援内容のデータをまとめて来た。」 
おっとりとした容姿に細いフレームの眼鏡、真直ぐな銀髪をかっちりとまとめ、白を基調とした略装軍服の彼女は夫を見上げると、その手に抱えていたスモークシルバーの小ぶりで頑丈なアタッシュケースを持ち上げ、「例のもの」と言って、にこり、と笑った。
「電子妖精のカスタマイズ版が出来たのか。」
手にはめていた軍手を取るとつなぎのポケットに入れ、カールはそれを大事そうに受取る。
「うん、ついさっきね、向こうの子が届けに行く所だったんだけど、私こっちに行くから受け取ってきちゃったの。」
「早かったな。」
「皆優秀ですから。」
そんな会話をしながら二人は顔を見合わせて笑う。
この国の住民は普段は割とのんきで自由に見えるが、「遊撃手」という国の名が示すように、ここぞという時の統率力と動きの良さには定評があった。
むつきが夫に手渡したものは、哨戒機であるチャーイカに搭載されるアビオニクス及び、軍事用サポートAI DAMA、そしてそれらを運用するパイロット達とバッジシステムを、スムーズに連動させる為に専用カスタマイズさせた、電子妖精(レンジャー連邦版)プログラムである。
「ソフト面の方はいつから入れそう?」
「機体の方は現在最終調整段階に入った、来週の末にはできるだろう。」
「了解、完成までもう少しだねえ…。」
「ああ。」
カールは自身でアタッシュケースの中身を確かめると、それを側に控えていた副官に渡し、そして艶やかに塗装された『娘』を見上げた。 哨戒機に美を求めるのはナンセンスと彼は考えていたが、そこにいる自分の妻がそれを覆してしまった、と思う。 彼女が手掛けて来たこのシリーズも3機目、ラスターチカやヴァローナとは違うものではあるが、これもまた独特の美しさを持っていた。
むつきも揃って機体を見上げていたが、直ぐに視線をおろすと、忙しく働く仲間達の様子を見回して、回想に入りそうになった自分の夫に声をかける。
「カール、システムチェックとテスト飛行の段階に進んだら、皆に一旦休みを取らせてくれる。」
実の所、チャーイカ開発に就いている人間の数について、ラスターチカやヴァローナを作った時程多くは無い。 ここに勤めるメンバーは何かしらのエキスパートなのだが、開発専属ではなく、必要に応じて選考が行われ、辞令により召集する事で集められているのだ。
そして現在、国の復興の為に軍全体も動いている為、手の空く者から元の部署に戻して行かなければならなかった。
カールは彼女の言葉に「分かっている。」と苦笑しながら頷き、これからのスケジュールを頭の中で組み立て始めた。


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レンジャー連邦空軍基地、某月某日/晴れ。


あれから、暫くの時が経過する。

風の穏やかな快晴の中、鴎姫を開発用ハンガーから格納庫へと基地内を移動させた後、カールとむつきはそのままパイロット席に座り、少しばかり感慨にふけっていた。
ここに至るまで、多くのことがあった。
この世界は生きるのも一苦労で、毎度の事ながら敵の攻撃は後が絶たない、宇宙怪獣だの訳がわからないのも来るし、心もぽっきり折れそうにもなった。
国だってまだまだ落ち着いていない、でも、こうして、カールとむつきは生きてNWの地に立っていて、チャーイカも完成となっている。なんとかなるものだ。
なんとかなったという事は、この先必要ですよ、と何かに示されているではないかとも思えてもいる。
ともあれ、心配されていた各システムとの連動性も問題なく、テスト飛行も無事終了した為、鴎姫は頃合いを見て実用的な運用に入って巣立つ事となるだろう。
この先二人が『娘』に乗って飛ぶ事はめったに無いだろうが、その代わり、訓練を積んだパイロットとコパイロット、そしてオペレーター達が乗り込んで、空から海を見守って行く。
自分の手を離れてしまうのは少し寂しかったが、カールとむつきが共に願うの事は一つ、蒼と青の境を美しく飛ぶカモメが、鋼の翼に背負う役目を見事に果たし、そして無事ここに帰って来る事…。

「お疲れ様、カール、色々とありがとうね。」
「いや。慌ただしかったが…そうだな、なかなか楽しかった。」
「関わってくれた皆にも感謝だねえ、機体は私達だけで作れる物じゃないもの。」
「ああ、そうだな。」
「うん。」

そして、一組の夫婦はフロントガラス越しの空を見上げて、ほほ笑んだ。


~ カモメは蒼と青の境を密やかに飛ぶ  完 ~









レンジャー連邦空軍基地、某月某日/晴れ。そして蛇足。


「…さてと、開発も終わった事だし、今日から私、あなたの奥さんに戻りますよ。」
「ははは。」
「夕ご飯は何が良いかなあー、使える材料は限られてるけど、頑張っておいしいご飯作るね。」
「頼む。」
「はーい。(よし、愛の料理レシピと愛のエプロンの出番なんだお!)」


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最終更新:2010年10月23日 20:50