前期制アルカは2002年3月13日から2003年6月頃まで使用された制アルカである。セレン=アルバザードは2001年春ごろから「世界一簡単な言語」をコンセプトとしたプロトタイプ制アルカを作成していたが、2002年3月13日のアシェットの会議において、クミール(当時21歳?)がノシロ語HPのurlを教え、そのコンセプトでなく、「アシェットのための言語」を作ることを依頼したため、セレン(当時21歳)はプロトタイプの破棄し、新たに言語を作成した。ゆえに音韻・文字・語彙・文法はプロトタイプ制アルカとの関連性は薄く、この前期制アルカが言語学的区分における制アルカの始まりと見なすことができる。
『幻日文例辞典』終了翌日の2003年5月12日に自動詞接頭辞o、受動態接頭辞a、能動態接頭辞iの廃止、連続・反実・排他反実・推量・伝聞・自発・試行・使役・経験などの使用頻度の低い意味時相詞の消滅、受動態純詞yuの導入、禁止依頼をifからol、勧誘をecからarに替える改訂があり、2003年5月14日に語頭子音連続の削減という改定が起こり、中期制アルカに移行した。

音声

音韻

20子音5母音体系。この音韻体系は2001年12月ごろのプロトタイプ制アルカのものを引き継いでいる。
後の新生アルカに至るまで、アルカの音韻体系はこのまま維持されている。

/p//b//t//d//k//g/
/m//n/
/r/
/f//v//s//z//無声後部歯茎摩擦音//有声後部歯茎摩擦音//h/
/歯茎接近音//j//w/
/l/

/a//i//o//e//u/

前期制アルカでは語頭子音連続が多かったようだが、2003年5月14日の改定で類音grがklにまとまるなどして、語頭子音連続が削減された。

イントネーション論争

2003年クリスの月(1月26日~2月22日)、クミールセレンが公表した少ない制アルカのデータから制アルカのイントネーションと高低アクセントについての理論を発案。その案では、純粋な高低の2段階しかなく、カタセシスもピッチの自然降下も認めないため、抑揚が極めて少なかった。この抑揚の少なさはアルカ・エ・ソーンを参考にしたものと推測される。
同月、セレンはクミールの案に反対。常時はHML をの3 段階の高低を有し、句末音調によってSH、SL の2 段階を更に設けた5 段階の体系を発案した。
2003年2月24日、クミールはセレンの案に反対。M を除いた4 段階にすべきと主張しなおした。更にそのときの伝達者であるリディアはクミールの新案について反対し、別の話に持っていった。
リディアは無アクセント語の頻度が高いことを面倒だと主張した。無アクセント語は書くのも読むのも打つのも面倒で、廃止してしまえば良いといった。更に有アクセント語も不必要だと述べた。セレンはメルを交えて話し合った。メルは半分リディアの意見を取り入れた。有アクセント語は廃止しても良いが、無アクセントは残すといった。しかしリディアは無アクセントがあることによってピッチの自然降下やカタセシスが阻害され、イントネーションによる表現の幅を狭めていると主張し、無アクセントの廃止を主張した。セレンは実験的にリディアの意見を取り入れることにした。
加えてリディアは動詞を含む全ての語のアクセントを第1 音節に置くことによってアクセント記号を完全に排他できるとまで主張した。セレンはリディアのそのフィンランド語的発想を拒絶した。制アルカが自然言語に蝕まれるからである。しかし、より単純なシステムを取れるならその方が良い。イントネーションやポーズなどで誤解を解消できるならその方が良いとしてこれも実験として取り入れることにした。

文字

プロトタイプ制アルカに引き続き、文字案は決定されていなかった。
2002年10月15日から23日までは、筆記体に対応した文字にするため、一時母音の形が変わったという。
2002年10月23日には筆記体が消滅し、母音の形が元に戻ったという。またこの2002年10月23日に動詞と時相詞を繋ぐ動詞媒体(pafiapa)が作られた。

2002年10月27日、制アルカ用フォントtiphacを作成。
2002年10月28日、画面に現れる文字のギザギザを取り除いた制アルカ用フォントdienを作成。これが現在の明朝tiphacなのではないかと推測される。ということはそれ以前に現在のtes, ket, xal, solの表音文字体系が完成していたということになる。


語彙

PDIC

辞書はもともとMicrosoftのWordで作成していたが、2002年10月29日にセレンがPDICを使用する計画を立ち上げ、2002年11月12日にPDIC登録を開始した。2003年1月6日にはWordからPDICへの移行作業を完了し、同辞書の修正作業へ移った。

推定語彙数

2002年7月19日、セレンが『SVL標準語彙水準 12000』(アルク)内の英単語12000語をチェックし、『幻日辞典』に相当する語彙を記載する作業を終了した。ただし、文化の問題で必要ないとされた語彙は捨て置かれたため、実際にはもっと語彙が少ないものと推定される。また、アルカ独自の神名や用語をプラスされている。

文法

代名詞

○2002年7月6日『ソノヒノキ』
疑問
to 何 de u/wa

一人称 二人称 三人称 四人称
有生 non tis lu/me
無生 近 tu
指示 so
遠 ya

複数はsononのようにsoを頭につけるようだ。
「min tu この男」のように無生のtuで修飾が可能だった。

nan 自身

koo(そこ) koe(ここ)

○2003年2月13日『ソノヒノキ』
to 何 xe 何か
toc いくつ om いつ am どのような

一人称 二人称 三人称 四人称
有生 an ti 近 lu
遠la
無生 近 tu
遠 li

nan 自身
koo ここ

複数形はan soのようにsoを後置する。

動詞

純時相詞

○2002年7月6日の『ソノヒノキ』

過去 現在 未来
-a -i -o

将前 開始 継続 完了 影響
p t s k n

物語の地の文は過去時制を用いており、中期制アルカ以降の現在時制を使う風習はまだなかったようだ。また、通時時制-eと否定-uはまだ存在していないようだ。通時は現在の-iを用い、否定はdenを後置した。
影響相で状態動詞を表す。
san-in tu.これが好きだ

○2003年2月13日の『ソノヒノキ』
過去 現在 未来 通時
-a -i -o -e

将前 開始 継続 完了 影響
p t s k n

否定はosの後置。
物語の地の文を現在時制で読む風習が始まったようだ。
時制部を長く読む例がある。
pal ma-aa al hir.

意味時相詞

2002年7月6日の『ソノヒノキ』によるとモダリティは副詞で表されたようだ。
fal 義務
vi しようとする
von 意思
ven できる
on できる
en 出来ない
lap したい
lon 推量
das すべき

2003年2月13日の『ソノヒノキ』では、意味時相詞が見られる。
可能 不可能 希望 反希望
できる できない したい したくない
-el -ul -il -ux

必要性大
~した方が良い
-ih

必然・断定・客観 可能性大 可能性小 反必然
絶対~する たぶん~する 恐らく~する 絶対~ない
-ax -ix -ox -ex

意思 準備 経験
しよう ~しようとする ~したことがある
-ol -ov -iv?

  • avは自然か?

nosset-ova「自殺しようとした」のように意味時相詞の後に時制をつける例がある。

『アルカ』によると、連続・反実・排他反実・推量・伝聞・自発・試行・使役・経験時相詞があったらしいが、これらは2003年5月12日の改定で消滅した。
禁止依頼のifはol、勧誘のecはarに変化した。

2002年7月6日の『ソノヒノキ』によるとyu-i kil-i po「首を切られる」のようにyu-i「受ける」という動詞を合わせて受動態を表現した。yulid-i「殺される」のようにyuを頭につけて表す方法もある。

2003年2月13日の『ソノヒノキ』では受動態接頭辞aを使っている。
aset-ox 恐らく殺される。
adens-ul 否定されたくない

2003年4月16日ごろには、受動態接頭辞aを動詞に付けることで受動態を表したようだ。
同様に能動態接頭辞iも存在する。
これらは2002年5月12日の改定で排除され、受動態は純詞のyuで表されるようになった。

varte asort-ik (ヴァルテは掲げられた。)

自動詞

2002年7月06日の『ソノヒノキ』によると、自動詞と他動詞は文脈判断である。
pal ma-a al hir. (白は青に変わった)
non vem-i (私は恐れる)

2003年2月13日の『ソノヒノキ』も同様である。感情はコピュラを用いるようになったようだ。
pal ma-aa al hir.
an i vem (私は怖い)

2003年3月15日、セレン、自動詞を表わす手段を接頭辞oに委ね、自動詞を語彙的な統語手段で表わすようにした。

繋辞

2002年7月6日の『ソノヒノキ』によると、過去はa、現在はiのように時相詞をそのままもちいたようだ。
2003年2月13日の『ソノヒノキ』も同様である。

2003年2月25日、セレンは前日のリディアの主張を実験的に取り入れ、制アルカの調整に入った。この際、コプラのaと接続詞のaが区別できなくなるので、前者をat などとした。


形副詞

○2002年7月6日の『ソノヒノキ』
eで修飾。ked-a e xitar(無目的に出かけた)のように副詞化させることも可能。
否定のdenは前置されるらしい。
den non 私でない。
non xa-i hot「私だけいる」のように必ずしも修飾する語彙に直接後置されない。
ad >
id =

○2003年2月13日『ソノヒノキ』
eで修飾
aで形副詞化。中期制アルカから推測すると受動形副詞化前置詞と思われる。

vas >

関係詞

2002年7月6日の『ソノヒノキ』によるとleを用いる。主格・対格の区別はない。内包関係詞の意味でも用いられた。おそらく正式にはle~tunという括弧構造である。
non le xa-i koe ここにいる私
ez le non xa-i hot 私だけいる部屋
le yu-i kil-i po 首を切られること
sonohinoki le non tia-in tun 私が愛するソノヒノキ

2003年2月13日の『ソノヒノキ』によると主格はuls, 対格はotsを用いる。
2004年前半以前の中期制アルカの規則から類推すると、格詞+sで関係詞を生成していたものと考えられる。
la uls nee-e an lex neeme 私を姫と呼ぶ彼
bal ots san-i 好きな天上

格詞

2002年7月6日と2003年2月13日の『ソノヒノキ』に見られるもの。

○2002年7月6日『ソノヒノキ』
ul ~が
on ~を
al ~に、~へ
il ~から
ka ~で(場格)
im ~のとき
ok ~で、~と(随伴格と具格)
el ~にとって
mol/elk ~の場合、~したら
e ~のように?
tark ~だから(原因格)
tirk ~なので(結果格)
id ~と(lexに相当)
milt ~すればするほど

○2003年2月13日『ソノヒノキ』
ul ~が
ot ~を
al ~に、~へ
il ~から、~より
ol ~の場合
ka ~で、場格
im ~のとき、時格
kon ~で、具格
ok ~と、随伴格
ek ~を伴わず、不随伴格
tar ~だから、原因格
tir ~なので、結果格
yun あたかも~のように
pot ~の中で
del 同格
vas ~に対して。対立格?
si の後で
ist の代わりに
lex ~と、同格
tat ~ごとに
milt ~すればするほど

数詞

2002年7月6日の『ソノヒノキ』によると1はka?

『アルカ』のp92の記述を編集し忘れた語形と推測すれば、以下のようになる。
しかし、2003年2月13日の『ソノヒノキ』では8はteであるため、中期制アルカと同じ下段の体系になっていたと思われる。

0 1 2 3 4 5 6 7 8 9
u ko ta vi va le di fe me lo
u ko ta vi va le ki no te lo

メルの数え方と呼ばれる粒読みを行なう。
序数は2002年7月6日『ソノヒノキ』にはなかったが、2003年2月13日『ソノヒノキ』ではfea kotala(12時)のようにlaを後ろにつけることで序数を表した。


接続詞

○2002年7月6日『ソノヒノキ』
ee AND、重文も作れる
pos OR 片方のみ
pes OR 両方も可

vol そして
taal しかし
tail けれど
kont しながら

○2003年2月13日『ソノヒノキ』
an AND
er OR 両方も可能
in 重文を作る

o そして
vol そして
son だから、ならば
ta しかし
tol けれど
kont しながら

純詞

eyo かしら
lon だろう、推量
lal かなぁ

例文


文献

ネット上で確認できる文学作品では2002年7月6日と2003年2月13日のソノヒノキが存在している。

2002年11月27日にセレンが制アルカの概説書『制定言語アルカ』の執筆を開始した。この資料を大幅に加筆修正したものが、アルカ史資料『アルカ』(2003年10月15日)である。

2003年4月16日、『幻日成句辞典』と『日幻文例辞典』がPDICで作成開始。『幻日成句辞典』の最初の登録成句はvarte asort-ik で、次はoxt-i las。『日幻文例辞典』の見出し語はThe Japan Times の『日常英会話5000』に準拠した。また、『日幻文例辞典』の見出し語は「ひらがな:漢字仮名混」という『日幻辞典』の方式を却下して、漢字仮名混にした。5月11日、セレン、The Japan Times の『日常英会話5000』に収録された日本語文4300 文を『幻日文例辞典』に訳し入れ終える。

文化事項



参考文献

セレン=アルバザード"『アルカ』"
アルカの部屋 > アルカ 14|fav|zan
初代アルカ(1980)~2003/10/15当時の中期制アルカまでの歴史

セレン=アルバザード "sonohinoki_mel13.pdf"
人工言語アルカ > axlei390 2002/07/06
※『ソノヒノキ』(エスト原作)メル13年版 前期制アルカ資料

セレン=アルバザード "sonohinoki_mel14.pdf"
人工言語アルカ > axlei390 2003/02/13
※『ソノヒノキ』(エスト原作)メル14年版 前期制アルカ資料

最終更新:2008年05月02日 17:25
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