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プロトタイプ制アルカ(lamserenarka)は、2001年春ごろから2002年3月13日までの期間に作られた制アルカである。「世界一簡単な人工言語」をコンセプトとしたため、音韻・文字・語彙・文法の面で前期制アルカ以降のものと比べると異質であり、言語史的区分では制アルカには含めることはできない。それぞれの要素が試行錯誤の段階であり、プロトタイプ制アルカと呼ばれる期間中も絶え間なく変遷した。
2002年3月13日のアシェットの会議において、ソーンルシーラクミールは、コンセプトの違いを主張。ノシロ語のURLを教え、この言語の将来的方向性はノシロ語になると主張した。クミールはこのような方向性は望んでおらず、アシェットのための人工言語を作るように依頼。プロトタイプは破棄され、前期制アルカの開発が始まった。この2002年3月13日が制アルカの言語学的分類における誕生日である。


変遷

音声・音韻

当初、「世界一簡単な人工言語」を目指していたため、音韻構造はCVのみだった。
音声も母音5種類(a, i, o, e, u)と子音10種類(s, p, t, k, m, n, f, x, l, r)だけだった。
2001年11月8日の文法改定で、hと有声子音6種類(v, b, d, z, g, j)が追加され、メル13年初頭にwとyが追加された。音節数はwuとyiを除き98種類となる。
2002年3月13日、プロトタイプ制アルカの終焉の日、開音節ばかりの音韻構造ではメンバーの名前が正しく表現できないことなどが主張され、音韻構造は兵音節を含むようになった。前期制アルカではc音が追加され、新生アルカまで続く5母音20子音体系が完成した。

文字

klei.zip所収、セレン=アルバザード『ミールの書』(2001年2月2日~4月10日)に見られるように、その当初は古アルカと同じように表意幻字を使うことを想定していた。
しかし、2001年春にプロトタイプ制アルカの作成に着手後、周囲の要望もあり、dia(夢幻)という表意幻字で[d]を表すというような表音素文字を作成した。2001年ラルドゥラ月(6月ごろ)、それを筆記体化した通称:心電図文字が出来たが文字と文字の教会が不明瞭であり英語の筆記体より書きにくいため不評であった。8月7日セレンがフゥシカ氏にフォント作成を依頼し、初めてのPCフォントも作られ、改良もされたが、結局廃案となった。
2001年ミルフ月(9月ごろ)、当時のプロトタイプ制アルカは開音節ばかりの音韻構造であったため、メル氏によりアラビア文字のように子音字の上下に母音符合をつけるアブギダ形式の文字が考案された。子音字の左上に右下がりの斜線で[i]、左下に右下がりは[e]、右下に右上がりは[o]、右上に右下がりは[u]を表わす。何も子音につかない場合は[a]の母音を意味する。2001年9月16日の段階では10子音(s, p, t, k, m, n, f, x, l, r)、5母音(a, i, o, e, u)だったが、音素は次第に増加した。2001年11月8日には子音7種(h, v, b, d, z, g, j)、2001年12月初めにはy,wを追加した。母音5種類(a, i, o, e, u)、子音20種類(s, p, t, k, m, n, f, x, l, r, h, v, b, d, z, g, j, y, w, 無子音文字)で、yiとwuを抜かした98文字が最終的な音節幻字の形態である。この音節幻字の子音字は、前期制アルカから新生アルカまで使われた表音幻字と酷似した形状のものも多いという。
このアブギダ文字においてもフゥシカ氏によってフォントが作成されている。9月17日、10子音(s, p, t, k, m, n, f, x, l, r)、5母音(a, i, o, e, u)の文字の作成を依頼され、10月10日に提出した。その後、子音の増加により、11月頃に再びフォント作成の依頼があり、12月初めにはyとwの追加の受注があり、2002年1月26日にこのアブギダ文字の最終的PCフォント『最終案件』をセレンに提出したという。
2002年3月13日、前期制アルカの作成が始まると、音節構造が閉音節も含むようになり、音節幻字は破棄され、cを加えた25子音、5母音からなる表音幻字が生まれた。


※"kaji全ファイル.zip"所収フォント Arca_kaji.ttf (2002/02/02 10:43 作成)より作成した一覧。
実態参照は日本語入力の全角かな文字である。
前期制アルカ以降のhacmと比較するとtes, ket, nim, vin, fox, mir, par, bel, yun rusの10文字の形状と子音が一致する。
xal, sol, jokの3文字は形状が若干異なるが子音が一致する。
dur, gat, hac, cuk, zot, witの6文字は現在も現れる字形だが音は不一致である。dur[h], gat[w], hac[d], zot[g], cuk[z], wit[無]。
lexは前期制以降は母音のaを表す文字である。

語彙

特にプロトタイプ以降には見られない特徴について述べる。

有生無生を区別せず

例えばladiは「殺す・死ぬ」と「壊す・壊れる」を意味する。この特徴は前期制アルカ以降は見られず、set(殺す)、vort(死ぬ)、lid(壊す)のように分化している。

n対語

制アルカに特徴的なn対語はプロトタイプの段階から存在した。

2対語:ixa 書く ixi読む
3対語:kuma動物, kumi植物, kumo菌類
4対語:kefa南, kefi北, kefo西, kefe東, kefu方位
pa(乗り物)からkipa(飛行機), bipa(船), vipa(潜水艦), kupa(馬やラクダ)など。

ただし、以後のn対語には見られない特徴を多く持っている。
  • 代表語が-aで終わらないrobu(蓋をする)などの場合、robuni(蓋をはずす)のように-niを付加して対を作る。
  • 代表語が-oで終わる語の場合、不定語の語尾は-uでなく-uxu。
  • 中心語のあとに、共真-ta、共偽-va、選言-sa、選択-n、篩い-m、中心-paなどの語彙を付属することで様々なニュアンスを表現できる。例えばhorunioeは、hor-u-n-i-o-eと分けられるが、「hori(青)またはhoro(緑)またはhore(黄色)」という意味を一語で表現したものである。

インデックス語

ボアーボムのようにアルファベットや数で展開分類法的に生成した語彙。
数で表す一次元インデックス語とアルファベットで表す複次元インデックス語があるようだ。

pa乗り物
a:タイヤの数
 h:複数
 k:8つ
 b:4つ:bapa:車
 v:3つ:vapa:三輪車
 x:2つ:xapa:二輪車、自転車、オートバイ(明示xabupa)
 n:1つ:napa:一輪車
 z:なし
i:用途場所
 h:宇宙
 k:空:kipa:飛行機
 b:水上:bipa:船。kibipa=小船、小舟、ボート
 v:水中:vipa:潜水艦
 x:地
 n:地中
u:動力
 h:自力
 k:動物:kupa:馬やラクダなどの乗用動物
 b:機械

eke:川
fu(1):fueke:大河
wa(2):waeke:大きい川
bi(3):bieke:小川
vo(4):voeke:せせらぎ

明示形

ta/xuta腕 mi/memi(周辺) ma/mai(体)のように明示形がある。
恐らく、同音異義語が多いための対策であろう。
taは合流地点や具体物、miは不変、maは中心の意味の単語が別に存在した。

推定語彙数

1059語。(幻日辞典 Ver1.00 2001/12/19)

統語

  • SVO。
  • 自動詞はなく、o hike-to hahosa(何かがビンを落とした=ビンが落ちた)のようにして表したと思われる。
  • 前置詞に当たるものもなく、na ke mono a na ke na(私は駅を終点とした上で私は私を行かせる=私は駅へ行く)のように煩雑に表現される。実際にはke mono a ke(駅を終点とした上で行く)と省略されることが多い。
  • 修飾はleで形容詞、節を導く。keto le ka(大きい猫)、liza le kalu seka a luki-to(公園を場所とした上で走った少女=公園で走る少女)

代名詞

○一般
fa 疑問 la 全体 li 部分 特定, 任意 ve 選択 yo 零
有生 fati/ne 誰 lati 全員 liti 一部の人 eti ある~、誰か
無生 faso 何 laso 全部 liso 一部の物 eso ある~、何か

○指示代名詞
1人称 2人称 3人称 4人称
有生 na ti lu o
無生 so
自身nona 他人 noni
  • 前期制アルカ以降の一人称はanになる。oはoniに回帰
  • この当時は、三人称に遠近の区別はなかった。

tu これ tuka? ここ
va あれ vaka? あそこ

動詞

いまだ、制アルカに特徴的にみられる時相詞体系は見られず、接尾辞や純詞により表現したようだ。

○時制
過去-to・現在-xa・未来-su・過去現在-da・現在未来?・過去未来-me・不定時制-lu・無時制-laの8つがある。
時制を現す専門の表意文字があり、例えば|は無時制、Tは過去、+は現在というように表すという。
Φは無時制をあらわす。

○アスペクト
試行vi 開始-kita 継続-ya 完了-keti 結果存続-xe 連続-di
経過相の有無は不明

○モード
おそらく、動詞のようにna lapa kua zamuyuku(私は果物を食べたい)のように表すのではないか

勧誘 許可 禁止 懸念
~しましょうか ~してもよい ~してはいけない ~したくない
muna desa desi lapi

必要 責任 義務 必要性小 反必要
~しなければならない ~すべきだ ~しないほうがよい ~してはならない
tuxa xafa fala ? desi

不必要 自由 随意
~しなければならないわけではない ~すべきだというわけではない
tuxi xafi fali

依頼 希望 可能 不可能
~してください ~したい ~できる ~できない
mi lapa vena veni

命令
~しろ
re

客観必然 dia 客観可能 dii 客観不可能 dio
短時間 fiime 意思 safa 自然自発 safi
習慣 luna

  • 動詞と純詞(この場合助動詞に相当する意味)は同形で使っていたらしい。
  • 提案はまだない
  • 禁止命令と不許可と反必要性は未分化。
  • 禁止依頼系も存在しない。

○受動態
受動無時制-yuであらわす。

数の体系は、古アルカ晩期制アルカ新生アルカと同様、日本語と同じようなシステムである。
制アルカに見られる粒読み(メルの数え方)はしない。
四桁ごとに、万、億、兆などの単位が挟まる。

0 1 2 3 4 5 6 7 8 9
残存形 fu wa bi vo si nu za he le to
辞書形 yo hu ko be vo xo nu zo fe le to gala/ga tena/te

2002年2月以降に最終更新された辞典「幻日辞典 Ver1.00」によると下段の体系が使われているが、
インデックス語に古い形式の語形が残存している。
千以上の語形は不明。

参考資料

セレン=アルバザード"『アルカ』"
アルカの部屋 > アルカ 14|fav|zan
初代アルカ(1980)~2003/10/15当時の中期制アルカまでの歴史

セレン=アルバザード"<幻日辞典 VER1.00>"
アルカの部屋 > 幻日辞典Ver1.0 2001/12/19

セレン=アルバザード "<接続詞>"
アルカの部屋 > Arcaフォルダ 2002/2/24

セレン=アルバザード "kaji全ファイル.zip"
人工言語アルカ板 > 人工言語アルカ総合 2009/05/04 11:56 GMT
プロトタイプ制アルカの文字資料
  • フォントサイズ順.doc(2002/01/26 07:52 作成)
  • 作成順序.txt(2002/01/30 作成)
  • キー割振り.txt(2002/02/02 08:57 作成)
  • 新:フォント規則.txt(2002/02/02 09:50 作成)
  • フォント Arca_kaji.ttf (2002/02/02 10:43 作成)
  • ほか、文字のビットマップイメージ多数。

Kakis Erl Sax "arca_kaji.png"
録霊徒然草 > アルカ仮字 2009/05/08 22:04作成
※プロトタイプ制アルカフォント『アルカ仮字』一覧

Kakis Erl Sax "arca_kaji2.png"
arka@wiki > プロトタイプ制アルカ 2009/05/09 14:33作成
※プロトタイプ制アルカフォント『アルカ仮字』一覧。ye追加

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最終更新:2009年05月25日 15:08