6.動詞・時相詞 yuo/yula

動詞は名詞や形副詞と同じ語形の不定詞に、時相詞を付けたものである

〈繋辞〉


繋辞(dei)は唯一時相詞を介さなくても良い動詞である。繋辞には過去、現在、未来、通時の四種類があり、順にat,it,ot,etである
※2006/09/02最終更新版では、繋辞はdeiでなく、kuusovと言う語が使われていた。

〈時相詞〉


動詞を作る際に必要なもの。時制(テンス)と相(アスペクト)を表したり、希望、可能、依頼などのモダリティを表したりする。前者は純時相詞で、後者は法時相詞である
「不定詞+-(動詞媒介)+時相詞」で一つの動詞になる
また、アスペクトは五種で、時相詞の子音部分が担う。また、テンスは母音が担う

純時相詞

[ ova ]  bel-e         bel   -    e
   (料理する)      (不定詞/料理)(動詞媒介)(時相詞/通時)

  • テンス

過去 taz 現在 tiz 未来 toz 通時tez 否定den
a i o e u
※2006/09/02最終更新版では、通時はtezでなく、ximelと言う語が使われていた。恐らく、無時という意味だろう。

  • アスペクト

将前相 sav 開始相 kat 継続相 pask 終了相 kit 影響相 ilt
p t s k n

将前相 ~しようとしている 行為の開始時点よりも前の時点
開始相 ~し始める 行為の開始時点
継続層 ~している 行為の開始時点と終了時点の間
終了層 ~し終わった 行為の終了時点
影響相 ~した後 行為の終了時点よりも後の時点

※将前相
例えば三時に出発という行為を行うとすると、三時が行為の開始時点になり、二時や一時などは行為の開始より前の時点になる。二時というと三時の出発に向けて準備をしている段階である。この二時という時点に焦点をあてたアスペクトのことが将前相である

※影響相
 行為の終了時点で完了した行為の影響が行為の終了時点以降も続いていることを示す。代表例は「着る」や「開ける」である。「彼女は学校で赤い服を着ていた」の「着る」は彼女が自宅で行った行為である。自宅で完了した「着る」という行為の結果、彼女は「赤い服を着ている」という状態を獲得した。そしてその状態を保ったまま彼女は学校に来たということを表わす

[ova]
an ke-e lopn(私は駅に行く)
an ke-ip lopn (私は駅に行こうとしている)
an ke-is lopn(私は駅に向かっている)


  • 法時相詞

勧誘 許可 自分提案 相手提案 反希望
~しましょうか ~してもよい (私が)~しましょうか (あなたが)~したらどうですか ~したくない
ax ix ox ex ux

必要 必要性大 必要性小 反必要
~しなければならない ~したほうがよい ~しないほうがよい ~してはならない
ah ih oh eh

依頼 希望 禁止依頼 可能 不可能
~してください ~したい ~しないでください ~できる ~できない
al il ol el ul

命令 禁止
~しろ ~するな
ac oc

後期制アルカでは自分提案-oxと相手提案-exは統合され、どちらも-exを用いる。例:an dal-ox tian dal-ex ti?。そして-oxは不許可(~してはいけない)を表すようになった。また必要性シリーズ-ah, -ih, -oh, -ehは、-af, -if, -of, -efになった。そして、-ah, -ih, -oh, -ehは、「~しなければならないわけではない」、「~したほうがよいというわけでもない」、「~しないほうがよいというわけではない」、「~してはならないわけではない」を意味するようになった。


[ ova ]
an ke-il lopn(私は駅に行きたい)
an ke-ul lopn(私は駅に行けない)


意味時相詞(Kakis追記)

「アルカ」(2003/10/13)に記されているもので、後に法時相詞として体系化される前のもの。
当時の中期制アルカで使われていたらしいが、2004年以降の文献では見られない。
現在は、副詞で表されるモダリティーも多く含まれている。

勧誘 許可 自分提案 相手提案 反希望
~しましょう ~してもよい ~しましょうか ~したらどうですか ~したくない
-ar -ef -of -er -ux
次版形 -ax -ix -ox -ex

必要 必要性大 必要性小 不必要
~しなければならない ~したようがよい ~しないほうがよい ~してはならない
-ah -ih -oh -eh

依頼 希望 禁止依頼 可能 不可能
~してください ~したい ~しないでください ~できる ~できない
-al -il -ol -el -ul

命令 禁止
~しろ ~するな
-ac -oc

2004/05/12以前の前期制アルカでは禁止依頼-ol-if、勧誘-ar-ecだった

中期制アルカ2004年以降は副詞のもの
習慣 意思
日頃~している ~しよう
-af -if

後世の中期制アルカにおいて、習慣は純詞のnoltを使うか、高頻度のkeiを使ったと思われる。後期制アルカではkifだろう。意思は単純にan fit-o tu(私はこれを与えよう)のように一人称かつ未来時相詞でニュアンスを出す。

必然・断定・客観 可能性大 可能性小 反必然
絶対~する たぶん~する 恐らく~する 絶対~ない
-ax -ix -ox -ex

それぞれ、ax, ix, ox, exを副詞として用いて表す。よってso-ax(必ずする)はso-e axになる。

2004/05/12以前の前期制アルカではさらに連続・反実・排他反実・推量・伝聞・自発・試行・使役・経験時相詞があったらしい。


中期制アルカ2004年以降は純時相詞扱いのもの
否定
~ない
-u

〈格組〉


格組とはそれぞれの動詞が取るお決まりの格のことである。たとえばbad-eは叩く人と叩かれる物、つまり主格と対格が最低限必要である
こういった最低限必要な格がなんであるかというのがその動詞の格組である
動詞にはそれぞれ格組があり、おおまかに四つの種類に分けられる

1 ul&on(&al/il/ok/kon/ka)
 ulonを~する。alokなどを付け足せる
 [ ova ]
 an ku-a tu (そのことを言った)
 an ku-a tu al la (そのことを彼に言った)

2 ul&on(代替格)
 1と同様だが、onが他の格の代替になっている
 [ ova ]
 an ke-a koe (あそこに行った)
 an ke-a koe ok la kon lop (私は彼と電車であそこへ行った)
 ti xa-a ra? (君は家にいたの?)
koeka koe(場所格+名詞)になるが、ke-eの動詞の性質上onになるのは「場所」に決まっている。よってonkaの代替格となる。その他kot/ket,xaも同様の動詞

3 ul&on(再帰) 
 ulが~する。姿勢動詞に多い
 [ ova ]
 an skin-in (en) (私は座っている←私は私自身を座らせている)
 an kond-a (en) al lop (電車に乗った←私は私自身を電車に乗せた)
met-eは「落とす」である。「落ちる」と言うためには再帰代名詞のenonにあてる

4 uloni) 
 ulonも分かりきっている場合どちらも省略される。自然現象に多い
 [ ova ]
 esk-ip (雨が降りそうだ)
 teez-a (風が吹いた)

〈代動詞〉


 代詞のto,xe,do,ve,fi,weso(行為)me(再度)は代動詞になる
[ ova ]
to-e 何をするのか
do-e 全てをする
ve-e 部分的にする
xe-e あることをする
fi-e 何かしらする
we-e どれかをする
so-e それをする
me-e それを再度する

〈死生動詞〉


死生動詞とはas-eを使った生動詞と、is-eを使った死動詞からなるものである。これらの対格には動詞の意味を表わす語がくる。とりわけ複合語がくる。つまり、tafataflを例にとると、as-e(is-e) tafataflがそうである
 死生動詞では、本来の対格はal格が受け持つ。「鳥を鷹狩りする」という文では鳥が対格である。死生動詞を使わなければ、この文はtafatafl-e kutoであり確かにkutoは対格である。ところが死生動詞を使えばこれはas-e tafatafl al kutoとなり、対格をal格が受け持つようになる
 この動詞が使われるのは、その動詞を行使したり取り止めたりすることに重点がおかれている場合である。tafl-e kon tafaという場合は単に鷹で狩るという意味を表わすが、as-e tafataflの場合は鷹狩りを行うという点に重点が置かれる。「止めるのではなく行うのだ」という点に重点が置かれている。つまり、その行為をするのか止めるのかという点に重視が置かれる場合、死生が使われやすいということである

〈受身〉


 受身は副詞のyuを動詞の直後に置き、能動文のulonを入れ替えて作る。ul,onが入れ替わってもulはあくまでulの位置のまま動かない。つまり下の場合、ulanからlaに変わるだけで、ulの位置から右に行ってonの位置にulが移動することはない

[ ova ]an hak-a la(私は彼を誉めた)
   ul     on 

  la  hak-a  yu  an(彼は私に誉められた)
   ul          on

〈使役〉


 sol(使役)やvars(強制)を動詞として使い、onに使役内容を述べる。onはしばしば節がくるが、これは従属節なので時制の扱い方に注意しなければならない
※中立使役のsol後期制アルカではsos


[ ova ]sol-e la ke-i(彼を行かせる)※使役を受ける相手は、ke-eの動作主のla

動詞 格組
sol onをさせる(中立的な使役) sol-e la ke-i(彼を行かせる)
anos onを仕向ける anos-e la ke-i(彼が行くよう仕向ける)
dop/dep onを許可する/onを禁止する dop-e la ke-i(彼が行くのを許可する)
rok/rek onを成功する/onを失敗する rok-e la ke-i(まんまと彼を行かせる)
rot totについてonalに命じる rot-e la ke-i al sal e la(彼の上司に、彼が行くように命じる)
ret totについてonalの頼む ret-e la ke-i (al la) (彼に、行くように頼む)
vars/virs onを強いる/onを有志でさせる vars-e la ke-i(彼を無理やり行かせる)
yus 自由にonさせる yus-e la ke-i(彼の好きなように行かせてやる)
sers onしてあげる sers-e la ke-i(彼を手取り足取り行かせてあげる)

〈間接受身動詞〉


 am,imを動詞として使う。am-eは利益で、im-eは損害を表わす。利害の受取人は主節のulである

[ ova ]
an am-e la vort-i (彼に死んでもらう)※anが"lu vort-i"という出来事によって利益を受ける
la im-a noa vort-i (彼は娘に死なれた)※laが"noa vort-i"という出来事によって損害を被る

〈従属節の時制〉


 従属節の時制は主節との比較で行う
 従属節が主節と同じ時ならたとえ過去のことであっても時制は現在で良い
 逆に従属節が主節より前の出来事なら従属節の時制は過去になる
 このことは全ての節にいえることなので関係詞節の場合も同様である

[ ova ]
an se-e la ked-i (私は彼が帰ることを知っている)
an se-a la ked-i (私は彼が帰ることを知った) 
an se-a la ked-a (私は彼が帰っていたことを知った)
an in-e tu im an ked-i ra (私は家に帰る時、それを見る)
an in-a tu im an ked-i ra (私は家に帰る時、それを見た)
la se-e uk an ke-i (彼は私が行くところを知っている)
la se-a uk an ke-i (彼は私が行くところを知っていた)
la se-a uk an ke-a (彼は私が行ったところを知っていた)

{自動詞表現}(kakis追記)

未分化の時代

「アルカ」(2003/10/13)の記述によると、当時の中期制アルカでは、自動詞も他動詞も同形になり、文脈や常識で判断されたという。幻想話集アティーリなど、当時の資料を見ても自動詞と他動詞の語形が未分化である様子が伺える。そして厳密に定義したい場合はoniを用いたという。

kets met-a il elen
「猫が机から落とした」または「猫が机から落ちた。」

oni met-a kets il elen
「何かが机から猫を落とした」=「猫が机から落ちた」

『研究書』「動詞の自他の使い分けについて」(2004/04/27)においても、teik lad-aは「テレビが壊した」でなく「テレビが壊れた」であり、la lad-aは「彼が壊れた」でなく「彼が壊した」というように、常識や文脈で判断する状態だったことが記されている。そして、自動詞的解釈が発生するためには、動作主が意識されていない、動作主が不特定の何か、つまりoniであるという条件が挙げられている。


「yu-e 語幹」構文の時代

「研究書」の「yu型と非yu型」(2004/08/24)による。
oniは厳密として、文中には現れないという原則があったため、an met-a yuで「私は落ちた」と表現した場合、自然に落ちたのか、何かによって落とされたのか区別がつかないという問題があった。ゆえに「yu-e 語幹」構文を用いることで、自然の自動詞を作るようになった。

an met-a yu (私は落とされた)
an yu-a met (私は(自然に)落ちた)


上には載っていないが、当時の再帰代名詞enを用いた「自発」の自動詞を作ることも出来たのではないかと思われる。

an met-a en (私は自分を落とした=私は(自発的に)落ちた)

「et 語幹」構文の時代

『研究書』「yu型の消えたわけ」(2005/11/30)によるとyu構文では、an yu-e sorといえず、tu yu-e lidとはいえるというように、後ろの文が形容詞と解釈されるか、動詞と解釈されるかで、[yuを適応するかetを適応するか紛らわしかったという。
この時代にはこの統語上の位置では、sorは「高くされたもの」であり、lidは「壊されたもの」というようにどちらも名詞で解釈されるため、このような動詞で解釈するか形容詞で解釈するかという処理をする必要はない。
そのため、どちらもetを適応することで煩雑さに悩むことはなくなったという。

la et ma daiz 彼は王に変えられた者である=彼は(自然に)王になった

この自然自動詞を作る「et 語幹」構文は後期制アルカに引き継がれた。


最終更新:2008年02月16日 22:25