中期アルカは、1994年末頃~1998年2月26日に使われた古アルカである。内訳は1994年末頃~1996年頃使われた前クミール・アルカと1996年頃~1998年2月26日に使われた後クミール・アルカである。第二改定により、語順はSOVからSVOに変化した。また、音象徴の誕生によりアルカ独自の語彙が作られるようになり、自然言語由来語彙が排斥されアプリオリ言語に近づいた。また後クミール・アルカのこと生まれたアルカ幻字辞典『制定語彙』によって、アルカの表現力が向上、自然言語に頼らず、日常生活レベルの会話が実現されるようになった。
このように中期制アルカは自然言語からの独立という意味で第二の誕生の時期だったといえる。

音声

次第に音韻が定着。新参の使徒が参入し、多くの音声が流入し、各々聞き取れた音声の数だけ音素があると考え、人の数だけ音韻体系があるというのが実体である。制定語彙に載っているIPAはリーザが聞き取れた音声を元にしているが、以下にそれを列挙する。

子音

X-SAMPAで表記
[p][b][t][d][k][g][/](声門破裂音?)
[m][F](唇歯鼻音)[n][N](軟口蓋鼻音)[J](硬蓋鼻音)[N\](口蓋垂鼻音)
[B\](両唇震音)[r][R\](口蓋垂震音)
[4](歯茎はじき音)
[p\](無声両唇摩擦音)[B](有声両唇摩擦音)[f][v][T](無声歯摩擦音)[D](有声歯摩擦音)[s][z][S
](無声後部歯茎摩擦音)[Z](有声後部歯茎摩擦音)[s`](無声そり舌摩擦音)[z`](有声そり舌摩擦音)[x][G](有声軟口蓋摩擦音)[X](無声口蓋垂摩擦音)[R](有声口蓋垂摩擦音)[h]
[r\](歯茎接近音)[j]
[l][L](硬口蓋側面接近音)

ここに挙げられた子音は38 種で、これが『制定語彙』に記録された異なり子音の数である。ところがこの中の[F](唇歯鼻音)[N\](口蓋垂鼻音)[R\](口蓋垂震音)[p\](無声両唇摩擦音)[B](有声両唇摩擦音)[x][G](有声軟口蓋摩擦音)[X](無声口蓋垂摩擦音)[R](有声口蓋垂摩擦音)[L](硬口蓋側面接近音)は「この発音が正式であるが、通常は以下のように発音する」という意味の括弧書きがなされていたものである。たとえば[x]と書いてある後に([h])などと書いてあるのである。このことから、これら10 種の子音は半分異音のような扱いを受けていたといえる

母音

[i][y][I][e][2](円唇前舌半狭母音)[E][9](円唇前舌半広母音)[{](非円唇前舌狭めの広母音)[a][@](曖昧母音)[Q](円唇後舌広母音)[O](円唇後舌半広母音)[o][M](非円唇後舌狭母音)[u]
母音はこれら15 種であり、非円唇のものが多い。また、前舌母音のほうが奥舌母音よりも多く見られる。母音は子音と同様に減少の一途を辿るが、円唇母音が優先的に減少していった。
但し、母音も子音と同じく[y][I][2](円唇前舌半狭母音)[9](円唇前舌半広母音)[Q](円唇後舌広母音)[@](曖昧母音)の6 種に括弧書きがなされており、これらは半分異音のように扱われていた。また、母音は子音と違ってこれらは異音であるというように取れる記述がリーザによってなされていたため、これら6 種は異音と考えるほうが自然である。そこで古アルカは9 母音体系だったという考え方が一般的なのである。


文字

後クミール・アルカのころ『制定語彙』の誕生により新たな幻字が考案された。また、これまで数種の書き方が存在していた幻字の書き方が一種類に固定された。
このころになると幻字の発音がIPAで記されるようになった。
リディアは幻字が当てられていない神名を表すため、[arte](神)と[din](木の実)の文字を組み合わせて鈴蘭の神アーディンを表すというように万葉仮名のような使い方をしたようだ。
このころ、[hacma](使徒)の字が類似した「文字」を表す幻字と混同された。その文字が漢字の「幻」に類似していたため、セレンはこの文字を日本語で「幻字」と名付けた。またこの文字はメル8年、シェルトがメルとクミールによって作られ、メルを表す駒が[hacma]であったため、メルは公文書のサインに[hacma]を使うようになった。そのため[hacma]の意味は「使徒・文字・メル」と多義的になったのである。このような意味の多義化は幻字ではよくあったようだ。

語彙

音象徴が誕生し、急速に自然言語由来の語彙が排斥され、アルカ独自の語彙が増加した。形容詞などの語が増加し、SとOの部分が長くなったため、SVO語順への転換が促された。
制定語彙』誕生によって、日常生活レベルの会話が実現できる程度の語彙量になった。

文法

統語

第二改定によりSVO語順、形容詞と副詞は前置後置併用、前置詞使用体系に変更した。動詞は時制が付くため分かりやすいが、主語を表す後置詞や目的語を表す後置詞がなかったため、形容詞が増加して長文になるとSとOの境界が分かりにくかったためである。
ソーン・制アルカ(?~2008/01/19)や最初期の新生アルカのように例外はあるが、以後、ほぼ全てのアルカにおいてSVO語順が定着する。
前クミール・アルカまでは修飾句は前置されたが、後クミール・アルカの『制定語彙』の登場によって長い修飾語句や修飾節が発達すると、それらは後置されるようになった。
また、同格・挿入・倒置の表現が登場した。
倒置は文語上では「O, S V」のようにツンクが挟まれ、口語上では休止が挟まれた。

動詞

エクスプローダー(助動詞)や時制が発達した。

エクスプローダー

動詞の後に「意思」や「可能」を意味する内容語をつけて「~できる」のような内容を表現したのがエクスプローダー(助動詞)はじまりである。以後エクスプローダーは急速に発達し、最大時で100種類以上あったという。
[en] 可能。~できる。
[lan] 希望。~したい。
[na]禁止。~するな。もともと前置されたが他のエクスプローダーの影響で後置されるようになった。
[jan]否定。後第一改定アルカと同様前置のまま。

リーザが先代アルカから時制やアスペクトを表す接尾辞を流入させた。これは「符」と呼ばれている。
後クミール・アルカのころになると、制定語彙の登場により文語の頻度が増え、大過去radoや完了doraの頻度が増えた。リーザは後クミール・アルカで更に客観未来のse、推量未来のne、警告のsuを流入した。

大過去 過去 現在 客観未来 意思未来 推量未来
rado d ra se s ne

継続相 完了相
tan dora

警告
su

命令 弱い命令
re m

命令は敬意を表す接頭語miと組み合わせて使うことがあった。
[keko re] 来い
[keko m] 来て
[mi keko re] 来てください
[mi keko m] 来てちょうだい(小さい子供などに甘やかし口調で言うときぐらいしか使わない。)

前置詞

格標識として前置詞が生まれた。前置詞は内容語を文法化したものが多い。たとえば[kal]は「場所」という先代アルカだが、「私は学校で泣いた」という場合、当時はこれを「私は泣いた」と「場所は学校である」という2 文で表わしていた。即ち[del ena]と[kal de nalu:ta]である。この2 文を繋げると[del ena kal de nalu:ta]になるが、当時繋辞は頻繁に省略されていたため、これは抵抗なく[del ena kal nalu:ta]になっていった。もともと前第一改定アルカでは繋辞は使われていなかったため、繋辞の省略は抵抗がなかったのである。こうして前置詞は発達していった。たとえば時間を表わす[ima]も同様の手続きで文法化していったのである

関係詞

文語上では無音の関係詞をおいて、その後に節を置いた。口語上ではまだ発音されなかった。

天秤詞

天秤詞とは、日本語の(笑)や(汗)や(驚)や(涙)に近い対人モダリティーを表す文末記号である。
文語による伝言が増えたため、冗談で言っているのか真剣に言っているのか話者の気持ちが伝わりにくいという問題があった。
そのため、リディアが前クミール・アルカで作られたテンペラクーノステイラのかわりに「楽しい」や「笑う」や「怒り」を表す幻字を使うことを思いつき、それが普及した。「男」の文字をおいて「男っぽく喋る」の意味を出したり、「強い」の文字をおいて「語調が荒い」の意味を表したりした。
天秤詞は本来、「かっこわらい」のように発音することはないが、オヴィクリスは発音すると思ったため、彼らの作った天秤詞は発音され、「男口調」のgaや「女口調」のnが生まれた。リディアは彼らをまねて「子供口調」のa:nを作った。これらの天秤詞はあとから幻字が当てられた。

例文

著作物

制定語彙』は古アルカの幻字辞典である。基本的な幻字が記されていて、古アルカの表現力向上に貢献した。また、古アルカの著作物の中では権威の高い文献であり、その制定語彙で使われた黒緑色が公文書を記す際の正式な色とされるようになったほどである。
メル6年(1995年)ごろから『幻想話集アティーリ』の原形が出来上がってきた。しかし、神名表意幻字が整備され、原形を保つようになったのは、『制定語彙』が出来た後のメル7~8年(1996~1997年)ごろである。この文献以後、神々の物語が徐々にアルカに現れたり記されたりするようになった。

文化

メル8年(1997年)ごろメルとクミールがチェスに似たゲームシェルトを作った。

メル6年(1995年)に、それまで散在していたリディアによる空想のキャラクターたちがまとめてアルテと呼ばれるようになった。そういった登場人物は強大な力を持っているとされていたため、速やかに神格化がなされた。
制定語彙』の登場以後、独自の著作や文書が出来るなど、次第に独特の文化が形成されていった。使徒を表す幻字が制定された影響で、リディアによるアルテを表す幻字が作られ、合わせてIPAの読みもつけて記録されるようになった。作られては忘れられる不安定な状況でなくなったため、各々のキャラクターに詳細な設定が作られるようになった。制定語彙の中の神の数は136人。内、幻字が当てられたものは21人、既存の幻字の組み合わせで書かれたものは75人、音と説明だけ書かれたものが40人である。
神々の増加によって、それぞれの社会性や秩序が創造され、エルト(天神族)、サール(地神族)、テームス(悪魔)などのグループができ、神の間の王政秩序や上下関係も作られた。そして、神と悪魔の戦いを描いたヴァステやエルトとサールの戦いを描いたラヴァスなどの物語が生まれた。
さらにこれら神々の物語の後に『カコ』という物語をつなげようという考えが生まれ、幻想話集アティーリの原形が作られた。
多くの使徒は、アルテ信仰は馬鹿げている上に宗教禁止という使徒規則に反していると考えたが、1998年1月8日、リーザはアルテ信仰がアルシェの団結力を高めると考え公認した。

参考文献

セレン=アルバザード"『アルカ』"
アルカの部屋 > アルカ 14|fav|zan
初代アルカ(1980)~2003/10/15当時の中期制アルカまでの歴史


最終更新:2008年12月04日 21:55