月曜の夜、電話がかかってきた。
相手は・・・泉こなた。

卒業式の日に告白され、正式に付き合いだして3ヶ月になる、
私の大事な、大事な「彼女」

大学は離れてしまったので、そうそう毎日逢っているわけじゃない。
でもなるべく連絡は取るようにしていた。
それが昨日・一昨日の土日、こなたは全く音信普通だった。
例のコスプレ喫茶のバイトが入っていることは私も知っている。
それでもメールにも留守電にも返事がないなんて・・・

寂しさと不安と、ちょっとの苛立ちを覚えながら携帯を眺めていたところだった。
こなたの名前を確認した私はすぐに電話に出た。
「もしもし!」
「もしもし、かがみ・・・」
愛しい愛しいこなたの声。
心拍数も血圧も一気に上がってしまったようだ。

「どうしたのよ!電話もメールも返事くれないで・・・」
「う、うん。ごめんねかがみ」
「何かあったの?」
「・・・うん」

いつもと様子が違う。
ものすごく落ち込んだ声。
      • こなた、泣いてる?

少しの間があって、
「ねえかがみん」
「うん?」
「私、わたし・・・」
「・・・」
「私、かがみんが思ってるほどいい子じゃないから!」
泣き叫ぶようにこなたが言った。
いい子じゃないって、どういうこと?
「え?なんなの?・・・こなた」
「・・・・・」
「・・・・・」
「今から私が言うことに、もしかがみが『許せない』って思うんだったら、
 もう逢わないし、電話とかもしない」
普段のこなたからはあまり想像できない、低く、落ち着いた声。
でもその声は震えていた。

こなたは何を言うつもりなの?
さっきまでとは比べ物にならない不安と焦りと、そして・・・

諦めの気持ちが私の中で渦巻いた。

「こなた、いいわよ。言って!」

もう本当はこの時点で泣き出してしまいたい・・・でも私は努めて冷静を装ってこなたを促した。

また少しの間があった。
そして・・・

「付き合ってるの・・・かがみんだけじゃないってこと・・・」

小さいけれど、はっきりした声でこなたは言った。

想像していたとおりだった。それも最悪の。
すぐに返事ができないでいると、

「さ、最初は、告白したときはもっと軽い気持ちだったんだよ!」
こなたが勝手に続きを話し出した。
だまって聞いていることしかできない私。
「大学も分かれちゃったし、このまま疎遠になるのも嫌だなって」
「・・・・・・」
「もうちょっとかがみんと遊びたかったなって」
「・・・・・・」
「こんなに、かがみのこと、好きになるなんて思わなかったから・・・」
「・・・・・・」
「かがみん、優しすぎるから・・・」





時間だけが経過していく。
電話の向こうで、泣いているこなたの声。
何も言えない。
何を言っていいのか分からない。

どうしてこなたは私に・・・・
私をどうしたいの?
私はどうしたいの?
こなたの気持ちは?
私の気持ちは?


「ねえ、かがみ」

我に返った。
もう、こなたは泣いていない。

「どうするの?私と別れる?」
「そんなこと・・・」
「言っておくけど、私は私だよ。変わらないよ」
「・・・・・」
「お願い!別れるなら別れるでいい。かがみんも変わらないでいて!」

これは、「二股でいいなら付き合ってあげる」というこなたからの最後通牒だ。
答えははじめから一つしかない。
こなたと別れるなんて、できない。

「今までどおりでいいわ」
泣きそうになるのをこらえて、私は言った。

「ふふ」
安心したようなこなたの声がする。
「かがみんも私の虜なんだね」
いたずらっぽくこなたが言った。

そう、わたしはこなたの虜。
「かがみんも」・・・こなたの虜って何人いるんだろう?

「でも」
本当はとてもつらいのよ・・・と言おうとした矢先、
「あのねあのねかがみん、実はバイト先でね」
遮るように突然こなたがしゃべりだした。


こなたの彼女の一人は、あのバイト先の子だった。
以前バイト先に遊びに行ったとき長門有希のコスプレをしていた子。
雰囲気や声が岩崎みなみちゃんに似ていて、ちょっと印象に残っていた。

だけど長門さん(仮名)は最近常連客の一人と付き合いだして、
要するにこなたとの三角関係になってしまい、
この週末はその事でひと悶着あったということだそうだ。

店長まで巻き込んで話し合いの場が持たれ、一応こなたが身を引く代わりに
常連客も店やほかの客に迷惑をかけないということで決着したらしい。
しかしこなたは、実は身を引く気など全然なくって・・・・

以上がこなたが(一方的に)私にした話。


私は、待ち受け状態の携帯をふたたび眺めながら考えていた。

(こなたはバイト先のトラブルを誰かに聞いて欲しかったんだ)
(でも、話せる相手は私しかいない)
(私に話せば、私以外の人と付き合っていることがばれてしまう)
(だから、こなたは悩んだ末に私に二股を告白した)

『聞いてくれただけでも嬉しかった。ありがとうかがみん』

電話を切る直前こなたは言った。

私がこなたにとって必要な人であるということ。それは素直に嬉しい。
だけど・・・

「いいわ!」

着替えを終えて、ベッドにもぐりこむ私。

「何人『彼女』がいたってかまうもんですか!いつかきっとこなたを」

「私だけのものにしてみせるわよ!」


頭から布団をかぶる私の頬を

涙が伝っていった。

















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コメント:
  • コナビッチときたかw -- 名無しさん (2009-11-20 01:52:09)
  • 7行目
    こなたは全く音信普通だった。→こなたは全く音信不通だった。 -- 誤字指摘 (2009-11-03 10:56:51)

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