【りあらりん、恋心暴走中】

「バロ様に会いたいよー」
    りあらりんの叫び 91707002

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唐突に恋に落ちたりあらりんは目下暴走中であった。
藩国民の集まりに顔を出しては、バロへの恋心を切々と訴える。そんなはた迷惑なりあらりんに対して、たけきの藩国の優しい人々はその乙女ぶりを暖かい目で見守ってくれるのだった。


ついに、お見合いに参加するメンバーを選出する投票がはじまった。
りあらりんは落ち着きなく投票会場を行ったり来たりしながら、一票、また1票と投じられる票をはらはらと見守り、しまいには集計を待つことができなくて自前で集計を始める始末だった。
多くの票を集めている人物のエントリーページを隅から隅まで熟読し、自分に足りないものを確かめている。
「インパクトが足りない……」
彼女のエントリーページには、圧倒的に押しが足りないのが明らかだった。
「あともう少しこの気持ちに気付くのが早かったら、もっと想いを込められたのに……」
はーっと、りあらりんは大きな溜息をつく。
彼女が自分の恋心に気付いたのは、お見合いのエントリーが締め切られてからのことだった。だから、彼女のエントリーページには、今この瞬間にも彼女の中で燃えさかっている熱き恋の炎の片鱗も感じられないのだ。
「もうっ。なんてタイミング悪いのかしら」
りあらりんはそう嘆くのだが、そもそもお見合いにエントリーしたことによって高揚した気持ちが今の彼女の恋心を育てたのだから、エントリーページにその想いを込めるのは時間軸的に無理な話だったのだ。
「うう、切ない。どうしてこんなに急に好きになっちゃったんだろう」
考えたところで、恋には理屈も理由もない。まあでもこの場合は、理由の一つとして考えられるものがあった。
それは、りあらりんの妄想力である。


りあらりんは、感情移入過多なゲーマーである。
ゲームをプレイする時はキャラクターに過剰に感情移入して、あらん限りの妄想を働かせながら、その世界にどっぷりひたりこんで楽しんでいる。
そんな彼女にとって、アイドレスの世界は非常に居心地の良い場所だった。どっぷりと自分のキャラに感情移入して、たけきの藩国の雰囲気を楽しみ、たけきの藩国民として楽しい日々を送っていた。
そんなりあらりんはお見合いにエントリーした時点で、自分が代表に選ばれてバロと話すところを猛烈に妄想してみたのだった。
憧れのバロにどんなことを言おうか、どんな風に眼鏡のことを切り出そうか、果たしてバロは自分の作った料理を食べてくれるのだろうか、自分の言葉にはどんな答えを返してくれるのだろうか、等々。
とにかく何度も何度もいろんなパターンのシミュレーション(という名の妄想)を繰り返しているうちに、りあらりんはすっかりバロに夢中になっている自分に気がついたという訳だ。
よくよく考えたら、それって単に脳内バロに萌えているだけでは……ということに気付いて、ちょっとへこんでみたりもする。
「それでも、バロ様を想うこの気持ちは嘘じゃないもん!」
とりあえず暴走した勢いでつらつらと恥ずかしいSSを書き綴るだけの勢いはあった。
この恋心は決して嘘ではあるまい。
かなり羞恥プレイ気味なSSを公開することであとで、あとでどれだけ恥ずかしい思いになるのかは、この際目をつぶっておくことにする。今はもうのぼせちゃってそれどころじゃないからだ。


このSSが執筆されている時点では投票の締切までにはまだ時間があるが、やはりエントリーページの押しの弱さからこれ以上の票集めはなかなか難しいように思われた。
(りあらりんに投票してくれたたけきののみんな、ありがとう。)
そこで、りあらりんが目を付けたのは同じくたけきの藩国からエントリーしているコダマゆみの存在であった。少なくても現時点でりあらりんよりは票を集めている。
「こうなったら、せめてゆみさんにこの眼鏡を託して、バロ様に眼鏡をかけてもらうしか……」
そう言ってりあらりんはひわみに手渡されたバロにもっとも似合う眼鏡のケースをぎゅっと握り締める。自分からアプローチするチャンスがないのなら、せめてバロの眼鏡姿に萌えたい。健気というよりはすっかり見当違いな考えにりあらりんの暴走振りがうかがえる。
「あとは高神喜一郎さんに頑張ってもらって……と」
エントリー一覧を眺めて、りあらりんは呟いた。他の女にとられるくらいなら、高神喜一郎さん相手の方が許せる……というか、さすがに脳内バロに萌えているだけの自分では、直接バロにあって助けられて恋に落ちたという高神喜一郎さんの想いには勝てない気がする。(悔しいけどね)
「あ、そうだ。メンバーに選ばれなかった場合は、緑ジャケットを着て邪魔しに行くって手もあるか」
それは天啓だった。緑ジャケットの妨害軍団にまざってお見合い会場に潜入し、そこでおもむろにジャケットを脱ぎ捨てて、バロに告白するのはどうだろうか。そのプランを語ったりあらりんに、藩国のみんなも賛同した。
「りあらさん、それだ!」
「それ、名案」
恋する乙女は手段は選ばない。その盛り上がりこそネタ国家、たけきの藩国に相応しいものではないだろうか。
わいわいと騒ぐ仲間に囲まれながら、りあらりんは本当にこの国を選んでアイドレスに参加して良かったなぁと胸を熱くする。
「それにしても……。小笠原に行けばバロ様に会えるのかなぁ。そもそもバロ様、小笠原に呼べるのかなぁ」
思いつくがままにいろんなことを言い出すりあらりんに優しい仲間が答えを探してくれる。
「んー。黒の騎士の次のアイドレスに入っているから、呼べるんじゃないかな」
「そっかー。じゃあとにかく頑張ってあと17マイル稼がなきゃ。遠い……遠すぎる。そして、デートは更に遠い道のりだわ。マイルーっ」
「マイルね。お、更新だ。青のあっちゃんと舞ちゃんの公募で1マイル貰えるってよ」
そのフォローの優しさは骨身に染みる。ホント、マジでたけきの藩国万歳。みんな、ありがとう、愛してる。
恋してるのはバロ様だけどね。


りあらりんは、無名世界観を舞台にしたゲームはGPMしかプレイしていない。GPMキャラは好きだけど、GPMキャラ同士で仲良くしているのを眺めているのが好きなので、小笠原ゲームがはじまったと聞いても特に興味は持っていなかった。
マイルがなかなかたまらないこともあり、縁がないねとスルーの方向だった。
だが、今、りあらりんは熱烈にマイルが欲しい。小笠原に行きたいと願っている。
バロ様に会いたい。
恋心がもたらしたりあらりんの暴走はまだまだ続きそうである。

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我ながら勢いだけだと感じるお見合いSS第2段。
我に返った時、マジでどんだけ恥ずかしいのか今はまだわからない。
最終更新:2007年07月19日 16:41