【りあらりん、恋に落ちる】


「どうしよう……。私、恋に落ちたみたい」
「えーっ」
    りあらりんとたけきの国民の会話 71707002

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黒オーマとの見合いの話が持ち上がった時、たけきの藩国で真っ先に手を挙げたのがりあらりんだった。黒オーマの指揮官であるバロに憧れていたからである。
「バロおじ様、格好いいv。お料理作ってあげたいなー」
うきうきした気持ちで、料理を作り、お見合い衣装を選んだ。彼女が選んだお見合い衣装はたけきの藩国民らしい着物。その色は彼女の大好きな赤だった。
バロへの憧れを胸に書き上げたエントリーページは、自分でも驚くくらいに真っ向から乙女路線になった。技族である寿々乃と月光ほろほろは素敵なお見合い写真を仕上げてくれたし、ひわみの書いてくれた支援SSは「バロ様に眼鏡をかけてもらいたい」と思っていた彼女の心をまるで読んでいたかのようで、びっくりして嬉しくて感動したと彼女は語っていた。
応援者の協力を得てエントリーページを作り上げた時、その全体を貫く乙女らしさに「ちょっとした羞恥プレイだよね、これ」とりあらりんは笑っていたのだった。
その時点では、彼女は自分の心に起こる変化を予想すらしていなかった。


16日の当初の締切に間に合うようにエントリーした時点で、既に各国から多くの参加者が声をあげており、まるで綺羅星のような各藩国の代表者の名簿を見て、彼女はひっそりと溜息をついた。
「こんなゴージャスメンバーの中、6人のうちの一人に入るなんて難易度高すぎるわ……」
その後、エントリーの締切は延期され、17日の最終締切には90人を超えるメンバーがエントリーする結果となった。エントリー人数の増加によってお見合い参加人数も増えるということだったが、倍率が高いことには違いはない。
他の参加者のエントリー情報を端から端まで熟読して、自分が選ばれる難易度を考えて、りあらりんはへこみにへこんだのだった。


とことんへこんでみたところで、りあらりんはあることに気がついた。
エントリーは決めた時、バロに対して抱いていた気持ちは憧れだった。
だが、弾んだ気持ちでエントリーページを書き上げ、お見合いというイベントに向けて盛り上がっているうちに、いつの間にかその気持ちに変化が生じていたのだ。
「どうしよう……。私、バロ様が好き……」
りあらりんは困惑した様子で呟いた。
もし、メンバーの一人に選ばれてお見合いに参加できるのならば、胸を張って堂々とバロに告白するつもりだった。それでバロから色よい返事を貰えるかどうかはまた別の話だが、真っ向からアタックできるなら、全力を尽くすつもりだった。
だが、大人数のエントリーにより、お見合いメンバーに選ばれるということが非常に狭き門であるとわかった時点で気がついたこの気持ちは、りあらりんを動揺させるのに十分なものだった。
「お見合いメンバーに選ばれなかったら……私が参加もできないところで選ばれた誰かが誰かがバロ様の心を射止めてしまったらどうしよう……」
恋は人を強くも弱くもするが、りあらりんの場合はどちらかというと弱気になってしまったようだ。バロに会いたいと高まる気持ちを自分でもどうにも扱いかねて、りあらりんは他の国民に打ち明けた。
「私、バロ様に恋してしまったの。お見合い行きたい」
切々と訴えるりあらりんを寿々乃が励ました。
「メンバーに選ばれると良いですね」
「でも、あの綺羅星のようなメンバーじゃ、私なんかじゃとても太刀打ちできない」
「たけきの藩国の票を結集すれば、行けるかもしれないですよ」
国内の票まとめを提案してくれたのは、こんこだ。
「ありがとう。でも、私ね、ゆみさんのエントリーも大好きなの」
りあらりんと同じくたけきの藩国からエントリーするコダマゆみは、お見合いは争奪戦だという意気込みで参加を決めていた。そのノリはとてもたけきの藩国らしくて良いなぁと彼女は考えていたのだ。だから、たけきの藩国内で票まとめをするようなことはしたくなかった。
「マイルをためたら、小笠原でバロ様に会えるのかなぁ。バロ様、小笠原に呼んだら来てくれるのかな」
後ろ向きになったりあらりんは悪い方、悪い方へ考えが向いているようで、お見合いメンバーに選ばれなかった場合のことを考えはじめる。
「そもそも、私、出仕とか全然してないから(リアル事情で難しいし、資格もない)マイルをためる機会なんて全然ないのよ。今回のお見合いのエントリー記念で2マイルもらっても、それでやっと合計3マイルなの。20マイルって遠すぎる……」
しょんぼりと呟くりあらりんに、こんこが優しく声をかける。
「他の国民と一緒に行くならマイル出しあえるんじゃないですかね?」
「そ、それは恥ずかしいから嫌」
まったくもって我が儘である。でもまあバロにメロメロになっているところを見られるのはさすがに恥ずかしいと思うので、そこは勘弁してください。
手の付けられない状態で、ハートマークとしょんぼり感を同時に漂わせるという器用な真似をしながら、りあらりんは自宅に戻った。
「せめて、お見合いでバロ様と話すところ、妄想してみよう」
妄想力は人一倍のりあらりん。無駄に妄想を始める。その妄想が甘く恥ずかしいものであればあるほど、我に返ったら空しいということに、彼女はまだ気付いていないのだった。


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えーと。
上に書いた通りです。エントリー時点では、バロ様格好いいなーってくらいの軽い気持ちだったのに、何故か気がついたら恋に落ちてました。キャラ萌えしてました。
我ながら戸惑いが隠せません。
無名世界観のゲームって、実はGPMしかプレイしたことがないので、キャラ萌えというよりはアイドレスのゲームプレイ自体が楽しくて参加していたのですが、ここへきてこんなにキャラ萌えするとは思わなくって、本当に戸惑ってます。
我ながらイタタという感じではありますが、折角なのでSSにしておきます。
これぞ、まさに羞恥プレイだ。

藩国チャットでいきなり恋心を暴露して暴走していた私に優しく声をかけてくださった寿々乃さん、こんこさん、ありがとう。SSに登場してもらっちゃいました。2重にありがとうございます。
最終更新:2007年07月18日 17:04