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暁藩王「一本ほしいんだけどところで」
星鋼京藩王「あ、ウチも。博物館に宝重として一本」
になし摂政「一応I=D装備ナンデスガ」
暁藩王「俺ならいけるよ!」

「えええええ」

~ どこかでまことしやかにあったとされる会話 ~


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――“がんばって”――
――ただ、そこにはその言葉だけがあった――


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A71トモエリバー。
伏見藩国(現・星鋼京)製軽装甲機動戦用戦闘I=D。
帝國式の機動戦術に則ったファーストモデルにして、後の帝國製量産I=Dの礎となった記念碑的モデルである。

“ロマンの産物”“火のついた棺桶”“紙飛行機”“高機動土木作業機”etc…
等と、揶揄する言葉には事欠かぬ“名物機”であった。

(これは、現在のように潤沢な資源と技術に恵まれていなかったが故に、運用法が確立されていなかった事が原因であると強く主張したい)

しかしそれとてI=D技術黎明期においては極めて貴重な前線機甲戦力であり、
その高い機動性と火力を以て、幾多の戦線を支え、或いは勝利に導いた事実は確固たる物として記録されている。

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そんなトモエリバーには、帝國騎士の間でささやかれる伝説があった。
ロールアウト直後、最初期に配備された機体が装備していた剣に、何者かが文字を書いていったというのである。

それを当時見た誰もが、ヘタだなぁ、と苦笑する様な可愛らしい字であったが、そこに込められた思いが、
誰も嘲笑する事が出来ない程真摯である事は、誰の目にも明らかであった。

――“がんばって”――

ただそれだけ。
それは、何の力も持たないただの文字であるはずだった。

ただ、それが他の文字とは違ったのは。
それを書いた者が、他の誰より真摯な思いで以てその文字を刻み。
そして、それを見た者たちが、その思いを例え一端でも理解した事にあった。

文字は力を持ち、この剣を帯びたI=Dは、文字通り帝國の剣として、並居る敵を切り伏せたと伝えられる。

――それが、今やその存在すら疑われる帝國の宝重“トモエリバーの剣”にまつわる伝説である。

一説に寄れば、その文字は第一皇女であらせられた時分のぽち皇帝陛下の筆による物であるともされるその剣であるが、
実物の所在は押し並べて不明であり、事実を知るであろう関係諸公もその事については笑ってはぐらかすのが定例である。

最も、帝國においてその説を信じない者を探す方が難しい事であり、
ましてその説を信じる者が、その事実を証明しようとするような事は最大の野暮だと考える事は言うまでも無い。

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――になし藩国。

帝國の藩塀にして、炎の如くの輝く赤髪と恵まれた体格を持つはてない国人による国家であり、
赤髪の乗り手を筆頭とする機甲部隊、そして武勇の誉れ高き騎士団を擁する勇ましい藩国である。

が、帝國にあってこの藩国を知る者であるならば、真っ先にこう答えるはずだ。

“ぽち皇帝陛下の熱烈なファン”であると。

ただのファンではない。それは帝國に生まれ育った者なら大体そうである。
帝國民をして“熱烈なファン”と言わしめるのが、彼らである。
――それが並大抵の事ではないのは、敢えて言葉を連ねるまでも無い事であろう。

故に、この国にあって“トモエリバーの剣”伝説は半ば公然の事実として(実際、事実なのだが)語られるのはある意味当然の事だと言えよう。

――そして。
今、その伝説は、現実として甦ろうとしていた…。

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になし藩国と言えば、前述の通り、機甲と騎士の国であり、歩兵とI=Dの区別無く、剣闘による白兵戦の人気が高い。
そもそもにして帝國の気風がそれに当てはまるのであるが、騎士がI=Dを駆るここになし藩国においては、
それがより先鋭化していると言っても過言では無かった。

故に、になし藩国のI=D戦による白兵力には定評があり、騎士たちもまたそれを誉れとしていた。
その白兵戦を支える最強にして最後の友こそ、一振りの剣であった。
彼らにとって、剣とはただの装備品を越えた、命を預ける戦友なのだ。
それ故、彼らは剣に対して深い思い入れを持って接するのである。

それ故、になし藩国における兵器開発部門でも、剣の性能向上には余念が無かった。
殊、機甲部隊最精鋭となる“赤髪の乗り手”達については、標準装備以上の切れ味と耐久性を誇る剣を供給しようとの動きが始まっていたのである。

――だが。
になし藩国はそこで留まらない。
そう、になし藩国おいて伝説と称される剣が過去にあった。

“トモエリバーの剣”

それは、ぽち皇帝陛下の祈りが刻まれた剣が、手にした帝國騎士に一騎当千の力を与えたとされる伝説。

『になし藩国において、これを越える剣など存在しない』

それは、になし藩国兵器開発部門での…否、になし藩国の総意であった。
かくして、になし藩国における伝説の再来がここに始まろうとして…誰もが予想する壁にぶち当たる。

帝國の頂にいますぽち皇帝陛下に、どうやって直筆で剣に文字を刻んで頂くと言うのか。

――それは鋳込みじゃなくてもマーカーで良いじゃないかとか、手法の話をしているのではなく。

帝國至尊の御方に、どうやってそれをお願いするのかという問題である。
全く以て難解至極なその問題に対し、になし藩国開発部と首脳陣は…考えるのを止めた。

取り合えず、作ってから考えようという結論に達し、悩むのを止めたのである。
この楽天的というか、悩みを知らない所こそが、彼らの最大の強みであるのかもしれない。

ともあれ、剣の製作は始まった。

剣を鍛造するノウハウについては、そこは騎士の国。帝國でも一級の技術を持っている。
故に、藩国の技術を結集しての“名剣”が鍛造される事となった。

だが、如何な名剣と言えど、それが実力の伴わない物であってはならない。
剣の実力とは即ち、実戦での“強さ”に他ならない。
切れ味は鋭く、鈍らず、折れず、朽ちず、そして使い手と一体となる程馴染む物…それこそが、剣の強さである。

ならば実戦に即した形で試用すれば良い、それが彼らの出した結論であった。
まず構築されたのが強度と切れ味を確認する為のメソッドである。
これは、固定した刀身に対して再利用予定の廃I=D等から収集された装甲部材を高速でぶつける事によって、
I=Dの装甲を切りつけるシュミレーションとした物である。
もちろん、これによって細切れにされた装甲部材は、効率良く再利用に回されるという訳である。

なぜこのような回りくどい方法を取る必要があったかと言えば、試験とはいえI=Dを稼働させれば資源を消費せねばならず、
何度も繰り返す事が予想されるテストにおいて、際限なくI=Dを稼働させるのは余りにも効率が悪いと考えられたからである。
かくて、何本もの剣が半ばにして折れ、鍛え直されていった。
この苛烈なテストに耐え抜いてなお、切れ味を失わぬ剣は千本に一本程度であった。
それをして既に名剣と呼ぶに相応しい物であったが、伝説の再来を自負するには、まだ不足だったのである。

このテストをクリアした剣は、始めて赤髪の乗り手が手にする事となる。
使い手の手に馴染むかどうかは、実際使ってみる以外に測る事は困難であるからだ。
そこで、赤髪の乗り手達は、実戦さながらの訓練にその剣の試用を組み込む事としたのである。
彼らが用意したのは2種類のプログラム――実戦剣技の修練と、実戦様式の剣舞戦であった。

実戦剣技の修練とは、彼らの白兵技能の向上訓練として行われている物であり、
再利用予定の装甲部材で組まれた模擬標的を正確かつ迅速に“解体”する物である。
練達者ともなれば、定規で測ったかのように廃材を量産して見せると言われるそれは、
正に剣の切れ味と使い勝手を図るに打ってつけだと言えた。

そして、実戦様式の剣舞戦とは、I=D同士、剣のみを装備した状態で打ち合う文字通りの剣舞戦である。
但し、実戦形式とあるように、戦闘能力を剥奪するか、戦闘不能ないしは死に至らしめる、いわゆる“急所”を的確に、
そしてあらゆる方法で狙うという実戦に則した作法で行うという壮絶な物である。
無論、訓練であるので決して相手を傷つけてはならないが、それすらも操縦者に委ねられているが故に、
極めて高い操縦技術が要求される訓練という側面も持っているのである。
そして、剣の扱いとしては、実戦さながらの運用を要求される事に加え、
防御の為に剣同士で打ち合う事が多々ある事から、剣の強度が試されるという訳である。

かくも熾烈な試験を経て、まともな形状を残す剣など有り得るのだろうかと、誰もが疑問に思う事であろう。
事実、千に一つの剣は折れた。
その度に鍛え直された。折れた剣は丹念に鋳溶かされ、再び剣として甦った。そして、また折れた。
それは、まるで徒労のように見える事であった。
だが、そこにはわずかに積み重なって行く変化があった。
千に一つの剣であったはずの物が、気付けば900に一つの剣に。
次に気付けば800に一つ。ややもすれば、500に一つに。
戦士が鍛えられるかの如く、生まれ出でる剣が鍛えられていったのである。
それは、剣を鍛える職人たちもまた、積み重ねられたノウハウを昇華させていたのである。

そして、それは涼やかな音と共に、ついに訪れた。

千に一つの壁を易々と切り開き。
戦士の心がそのまま宿ったかのように奔り。
模擬標的を薄紙でも割くかのように断ち割り。
そして、敵した剣を真一文字に切り飛ばして見せたのである。
一つの刃毀れすら無く。になし藩国の青空を映し込んだかのような刀身を輝かせて。

それは、白糸のように薄い白刃と、粘りのある刀身、そして奥底には衝撃全てを吸収する鋼芯が絶妙なバランスで調和した物であった。
ここに、になし藩国が技術の粋を、更に昇華させて作り上げた剣が完成した。

銘は――“斬月”。

その刃は月すら斬れど、折れず朽ちず――。
それは、になし藩国の誇りが顕現した姿であったのかもしれない。

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剣の鍛造と並行して進められていたのが、塗料の開発である。

――彼らの名誉の為に誓って言うが、彼らは至極真面目である。

これは、文字を刻んで頂く際に掛かる労力を、普通のマーカー程度に落とし込みながら、
激しい戦闘でも掠れず、長い年月を経ても消えないようなものを、との思いに基づくものであった。
しかし、単なるマーカーであれば、塗料を上乗せするだけなので、時間が経てば剥げ落ちてしまう。
化学変化による色変化も、剣の構造を脆くしてしまうような事では大問題となる。

そこで考えられたのが、インクを二次的にコーティングする手法である。
即ち、樹脂等で塗布面を外部環境から保護すると共に、衝撃等で剥がれおちるのを防ぐ役目をさせるという物である。
但し、これもあまりコーティング面が厚くなったりすれば、剣の衝撃伝達に影響を与えてしまう事が考えられる為、
可能な限り薄く、しかし強力な保護効果を持つように研究されたのである。

その果てしない無理難題に対して、予想だにしなかった方面から吉報がもたらされる事となったのは、
になし藩国政府が半導体事業への産業育成方針を決定し、始動して幾ばくかの時間が過ぎた頃であった。

半導体事業では、高密度の集積回路や回路基板の生産に際して、極めて薄く、絶縁性や耐久性も強い皮膜が必要となる事から、
必然的に研究が進められていたのである。

これを聞きつけた研究班は、即座にありったけのサンプルを収集し、この研究に当たった。
そして、常温・常圧下でも使い得る、強力な皮膜生成用樹脂を作りだす事に成功したのである。

そして、同じく研究が進められていた抗酸化・抗光劣化インクと共に、一本のマーカーペンが作られたのである。
これは、書かれた端から樹脂によってコーティングされる仕掛けとなっており、市販品の数十倍は長持ちする見込みである。

ちなみに。
このマーカーペン、市販される予定どころか、これ以上増産される予定も無い。
とにかく単価が高すぎるのである。
また、そこまで強力に落ちないペンが求められる事も無いだろうという事で、
ただ2本のみが完成形として残される事となった。
1本は書いてもらう用であり、1本は書いて贈る用である。

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どうせ贈るならこっちからもメッセージ入れよう と言い出したのは誰だっただろうか。
一も二も無く採用されて、厳正な抽選の結果幸運な数十名が選ばれて、この日格納庫に集められた。

静謐な屋内には完璧に調整された空気が、音も無く満たされている。
彼らのまとう威風は優しくも凛と張り詰め、水底の如く静まっていた空気も彼らに触れては歓喜に震えるかのようである。

その髪は、闇の中でも輝くような、赤であった。

「私たちは、ここから始まった」

一人が、遠くを懐かしむような、言葉を発した。

「だから、次は私たちが返す番、ですね」
「その通り。では、始めようか」

――照明が灯る。
そこには、碧く澄んだ輝きを放つ、I=D用の剣が一振り。
出来上がった物の中で最も完成度が高いとされた逸品であり、先頭に立つ騎士の手には件の特製マーカーがあった。
いかにも似つかわしい漢くさい字体で一筆書くと、出口へ向かいながらキャップもせずにマーカーを放りなげる。
次の人間がそれを空中でキャッチしてまた剣の上に乗る。立ったまま上半身を折り曲げて何事か書き綴り、更に次の者に回す。
勝利を願う言葉がった。
無事を祈った言葉があった。
肉球で押された判があり、何人かで円形にまとめた寄せ書きがあり、まだ平仮名を覚えきっていないような幼子の字もあった。
ある程度文字で埋まると、クレーンでひっくり返されて裏面にも綴られた。柄に書く者もおり、柄尻にはフリーハンドでへたくそな帝国の国旗が描かれた。
書き終わった物を見て、全員が一様に、ひどく満足げな表情で頷く。それをキャットウォークから俯瞰してになしも鷹揚に頷いていた。

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かくて、材料は揃った。
伝説の再現は、目前となった。

後は、最大の難関を残すのみ――そう、いかにして皇帝陛下の筆を賜るか、という問題である。

しかし、そこにも既に秘策は用意されていた。

折しも時節は宇宙怪獣の来襲という、未だかつてない帝國の危機。
帝國の藩塀として、この危機へわずかでも支えになればと、鍛え上げし数振りの銘剣“斬月”を献上差し上げる。
その際、名立たる帝國騎士へと“祈りの言葉”を下賜して頂けないかと進言するのである。
かの“トモエリバーの剣”の再来として。

――それは、になし藩国だからこそ出来る策だったと言えるかもしれない。

そして。その策は実行に移された。


…皇帝陛下の為だけにしつらえられた、二つとない剣と共に。


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――になし藩国。
その片隅にある、兵器格納施設。現在は、過去の機体等を研究資料として保管しているが、あまりその存在は知られていない。

その更に片隅に。
施設の存在を知る者にも、ほとんど知られていない封鎖区画があった。
立ち寄るのは“そこに何があるのか知っている”者だけである。

そこには――鈍色に輝く、あの伝説達の姿があった。
幾本もの輝きが整然と屹立するその様は、歴戦の騎士団が居並ぶかのようであった。








それらは、鍛造されてからどれだけの時間が経ったろうか。
錆びもせず、朽ちもせず、折れもせず。ただ、かつての姿のまま、そこにあった。

そして、あの言葉も。

――薄らと青い燐光を放っているように見えたのは、気のせいだろうか。

もしかすると、そういう事もあるのかもしれないと思いつつ、静かに新たな一本の搬入を終えた。






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…青空の下。
居並ぶは帝國騎士団擁する精鋭I=D部隊。
勇壮な機体の一団が、誇らしく掲げる剣は、刻まれた皇帝陛下のサインと共に空の如く輝いていた。


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テキスト:天津 武 ・ 瑠璃 ・ 九重 千景
イラスト:瑠璃

赤髪の乗り手(職業) より派生

10/05/13:おまもりソード(オプション):になし藩国
L:おまもりソード = {
 t:名称 = おまもりソード(オプション)
 t:要点 = サインいり,I=D装備,剣
 t:周辺環境 = 帝國騎士団
 t:評価 = なし
 t:特殊 = {
  *おまもりソードのアイテムカテゴリ = ,,着用型アイテム。
  *おまもりソードの位置づけ = ,,{兵装オプション,帝國I=D用}。
  *おまもりソードの着用制限 = ,,着用制限(帝國I=D)。
  *おまもりソードの白兵補正 = ,,体格、評価+24。
  *おまもりソードの装甲補正 = ,,筋力、評価+12。
  *おまもりソードの初期AR修正 = ,,AR+2。
 }
 t:→次のアイドレス = 皇帝の加護(イベント),剣を鍛え直す(イベント),RRTR(I=D),剣受け(絶技)

#初期配備数10 量産できない。