「ギャグ畑……あの力を戦争で使えば恐ろしい戦果を上げるはずだ!!」
(その発言が既にギャグだって気付いてないんだろうなぁ……)

になし藩のある研究者とその助手の呟き

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かつて、金魚鉢で宇宙を泳いだ二人の漢がいた──。
それを皮切りに、しばしば物理法則さえ捻じ曲げるギャグの力を軍事転用しよう、という研究がになし藩国の一部で大真面目に行われていたのである。

念のため繰り返す。
ギャグの力を。軍事転用。大真面目に。

あるいはそれこそが最大のギャグであった。
プロジェクト発足時に提出された企画書の一部を以下に転載しよう。

──恐るべきギャグ畑の効能──
  • 爆発に巻き込まれても頭がアフロヘアーになるだけで済む
  • どう見ても真剣で斬ってるのに「峰打ちで安心だ!」→相手は死なない
  • 金魚鉢かぶれば宇宙にもいける。クロールとかバタフライで
  • 俺、この戦争が終わったら結婚するんだ……とか言って戦闘になったら吹っ飛ばされるがちゃっかり生きてる
  • 後々「あの時は死ぬかと思ったぜ」とか言えば大概の事は大丈夫
  • 誰も知らないはずの秘伝の奥義を知っている
  • 靴下で銃弾を防いだり靴下で空を飛んだりできる(靴下万能説)
  • 中学生がアッパーで対戦相手を天井にぶつかるまで吹っ飛ばしたりするが勿論死なない
  • 中学生がテニスの試合で分身したりする
  • 本当は男だけど魔法少女で大丈夫

etcetc。
こんなのが量産されて戦場に駆り出されたらと思うと背筋が寒くなるものがある。
しかし本当に恐ろしいのはこんなのの研究にゴーサインを出した藩国首脳部なのかもしれない。



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ギャグ畑。

聞いた話、黒オーマの戦士たちは皆ナチュラルにこの状態なのだという。
一説によると、真面目さが空回り過ぎてそうなっているのだとか、また別の説によると強くなったときにあれげなものにならないためにそうなっているのだとか。

になし藩国、身近にエイジャ兄弟という黒オーマの(ある意味)代表格といえる人物がいる。
彼ら兄弟は礼儀正しい。
大事なものを見失わない。
王女に剣を捧げる騎士として、尊敬すべき点も多い。

時折色々方向性が間違っていることを除けば。

無論、その時の状況にもよるのだろう。
彼らにとっては自身のことなどよりその時その時大事なものがある、というだけで。

人命よりも優先すべきことはない。だが洗濯してたからってその際褌すらはいてないのは見ちゃった人間には大問題。
宇宙遊泳するのに人間に真空状態は耐えられない。金魚鉢で顔周り覆っとけばおっけー。
お祝いにケーキを用意しよう。自分にクリーム塗って動くケーキ完成。ローソクとかトッピングも完璧。
漢なら最後に頼れるのは鍛え上げた己の体のみ。ならば漢は全員脱げ。(すぽーん

とんだシュールレアリズムである。
傍から見ている分にはとてつもなく面白い。ものすごく面白い。どう見てもギャグである。
巻き込まれた人間は別として。

が、ここははてない人の国、になし藩国。
巻き込まれようとなんだろうと大概の事は笑って許す能天気な連中の国である。面白ければ割と何でもありだ。
彼らのまっすぐさに惹かれている。何度も何度も国を助けてもらった。
そして何より兄弟たちは我らがぽち姫の剣だった。
かくあるべし、ではないが、憧れというものは自然と発生していた。
よく接する騎士だけでなく、国民皆の心のなかに。

別に狙ってやってるわけではない。
皆が皆、その時その時で大事なことを優先するのを隠さなくなっただけだ。
困っている誰かがいれば親身になる。
泣いている子供がいれば目線を合わせて話しかける。
一つ一つは些細なこと。
皆大真面目だ。
遠くからそっと眺めると「何かが間違っている、つーか何かズレてる」のだが、それはちょっと体面より大事なものがあるだけなのだ。

…まぁ、になし藩だし、という声もちらほらあった。
ちょっとやそっとのことでははてないの国は動じないというか驚きはなかったのであった。

何より彼らがいると姫様が柔らかく笑っている。
それならそれでいいのであった。

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僕は宇宙を泳ぐエイジャ兄弟を見た。今は思う。あれは幻なんかじゃなかったんだ!

~とあるAフェザーパイロットの証言より~



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この証言を聞いた騎士の中の、とある熱狂的なエイジャ兄弟ファンは自らの興奮を抑える事なく言った。
「我らが兄弟に出来る事が我らに出来ぬはずがない!例えそれが茨の道を行くより厳しかろうと、騎士の誇りにかけて、我が望み果たしてみせる!」

同僚の殆どは、そんな所に騎士の誇りをかけていいのかとか
エイジャ兄弟だから出来たのであって我らには無理なんじゃないのか、などと
冷ややかに思っていたが、まあ適当な所で諦めるだろうと、皆彼をほうっておいた。

だが…馬鹿とは諦めないが故に馬鹿であり、出来ないと思わないからこその馬鹿である。
になし藩国の国民は大概が色んな意味で馬鹿であるが、彼はその中でも群を抜く馬鹿であった。


宇宙には酸素がない。
これは詰まり、普通の人が金魚蜂なんか被って宇宙に出れば間違いなく死ぬ。
と言う事である。ギャグがどうとか言う話じゃない。
漫画やゲームならともかく、物理的に無理な物は無理なのだ。

「酸素さえ何とかなればよいのだろう!簡単な事だ!」

それは…そうですが…と彼から相談を持ちかけられた技術者は答えた。
初め金魚蜂で宇宙を往くと彼から聞いた時はめまいがした。
次にどうすれば無理だとわかってもらえるかを考えた。
そして金魚蜂だと酸素が供給出来ないから無理ですと言ったら、先ほどの答えを返された。

「要は頭部が金魚蜂型の宇宙服を作れと言う事ですか…?」
「いや!金魚蜂に酸素を何とかする物をつけてくれればいい!」

それだと気圧の問題をクリア出来なくて…ああどうしよう。
一個一個説明しないと駄目なんだろうか。
無常にも流れていく技術者の休憩時間を気にも留めず熱弁を振るう彼に、
技術者は少しだけ心を動かされていた。
勿論、真面目にやる気などこの時点ではなかったが。



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結論から言うと、研究は失敗したのだった。
というか、半分失敗した。
もう半分はなんだかよくわからないまま効果を上げ続けていた。
彼こそはギャグ畑である、とご町内で評判の青年が火事の中子供を助けに行って大火傷を負うようなその横で、
エイジャ兄弟はあっさり子供を助けていた。服は燃えたが褌は残っており、体には火傷の跡一つなく、黒光りした筋肉が誇らしげに動いていた。
ちなみに青年は全治三ヶ月と診断された。
死ななかったから成功だ!ギャグ畑の恩恵は青年にもあったのだ!とか叫んでいたマッドな学者もいたが更迭された。そもそも実証しようがなかったのである。
強いて言うなら何が起ころうと死なないぜ!というとか、理不尽なもので片づけてしまえるあたりがギャグなのではなかろうか、という説が強まってはいたが、
実証しようがないものをどうやって実用化させればいいんだろう?という疑問に突き当たったのはこの辺りだ。
やる前に気付けと言いたい。声を大にして言いたい。しかし全ては過去の過ちであった。



研究の主導者が更迭された事やなんやかんやがあってギャグ畑の研究は凍結された。
解った事と言えば、ギャグ畑というのは「なる」ものではなく既にそう「ある」ものらしいという事だけだった。
ギャグをやろうと思ってやってたら駄目であり、異論の余地もなく誰もが認める在り方そのものを指す言葉として認識されるようになったのである。
もっと端的に言えば、世界が認める存在でなければギャグ畑ではないのであった。
偉大な彼らに一般人が近づこうという時点で無理があったのかもしれない。
ギャグの道は険しい。
だが、心のどこかにはあきらめていない、という思いがある。
あるいはそれこそが真の不屈たるギャグ魂なのかもしれない。







「…というか最初のほうでも言ってたけれど、こういうのを真面目にやってること自体ギャグなんじゃないかな」
「それいったらはてない人自体ギャグだという説もあるんですが」


どっとはらい。


-了-



文:九重 千景・月空・瑠璃
イラスト:瑠璃



エイジャ兄弟2より派生
29:になし藩国:ギャグ畑(職業4):10/03/06:http://www33.atwiki.jp/areb/pages/254.html
L:ギャグ畑 = {
 t:名称 = ギャグ畑(職業4)
 t:要点 = 宇宙、金魚蜂、泳ぐ
 t:周辺環境=宇宙
 t:評価 = 体格6,筋力12,耐久力18,外見0,敏捷3,器用1,感覚2,知識2,幸運8
 t:特殊 = {
  *ギャグ畑の職業カテゴリ = 派生職業4アイドレスとして扱う。
  *ギャグ畑は高いところからおちても死なない。
 }
 t:→次のアイドレス = ひきこもり(職業),ニート(職業),ボディビルダー(職業),勘違い勇者(職業)

#4/20 開示に伴いL表記
最終更新:2010年02月18日 16:03